この時、篠崎澪の心の中には蒼井紅音しかいないのでしょうね?
自分は笑い者だわ。
蒼井紫苑は複雑な思いを抱えながらも、優しい笑顔を浮かべて言った。「お母さん、私、今回は必ずお姉ちゃんを見つけられる気がするの」
「うん」篠崎澪は頷いた。
夢の中でも早く娘に会いたいと願っていた。
あの時、蒼井紅音が行方不明になったのは、生後一ヶ月も経っていない頃だった。
誰かに虐められていないだろうか……
この何年もの間、家族のことを思い出したことはあるのだろうか……
篠崎澪は娘に直接聞きたい質問が山ほど溜まっていた。
二人が空港を出ると、迎えに来た運転手が見えた。
「お嬢様」
蒼井紫苑は頷き、スーツケースを彼に渡して言った。「辺城通り611番地に直接お願いします」
朝比奈瑠璃は辺城通り611番地に住んでいた。