「お義姉さん」
「はい?」蒼井華和は振り返った。
若松峰也は口の中のインスタントラーメンを必死に飲み込んで、「これって...ちょっと塩辛くないですか?」
ちょっとどころじゃない!
塩辛すぎて喉が渇く。
「確かに塩辛いかもしれませんね。私、麺を作るのは得意じゃないんです」と言いながら、蒼井華和はもう一口食べた。
そう言って、蒼井華和は若松峰也を見た。「私は大丈夫なんですけど、食べにくいですか?よければ新しく作り直しましょうか?」
タピオカミルクティーが大好きな以外、蒼井華和は食べ物にはあまりこだわりがなかった。
いつでも、どんなに不味い物でも、平然と食べることができた。
飢えを経験した人は、誰よりも食べ物を大切にする。
「いいえ、大丈夫です」若松峰也は急いで麺を一口すすった。「僕は濃い味が好きなので、むしろ好みです」
「本当ですか?」蒼井華和は目を細めて微笑んだ。
これは彼女の料理を認めてくれた初めての人だった。
「本当です!」
自分が嘘をついていないことを証明するために、若松峰也は3分もかからずに一杯のラーメンを平らげた。
食べ終わると、若松峰也は冷蔵庫からコーラを取り出し、一気に半分以上飲み干した。
蒼井華和はまだゆっくりと丼の麺を食べていた。
コーラを飲み終わって、若松峰也はキッチンから出てきて、「お義姉さん」
「はい?」蒼井華和は少し振り向いた。
若松峰也は携帯を見て、「母から急用があるって連絡が来たので、帰らないといけません」
「大丈夫ですよ、ここは私がいますから」
若松峰也は頷いて、「じゃあ、失礼します。何かあったら電話してください」
数歩歩いて、若松峰也は何か思い出したように引き返してきて、続けて言った。「そうそう、お義姉さん。兄貴の家には普段他の人は来ないので、どの部屋でも自由に使ってください」
「はい、分かりました」
全てを伝え終えると、若松峰也は立ち去った。
蒼井華和はラーメンを食べ終わり、キッチンに行って食器を洗おうとしたが、若松峰也が既に鍋と自分の丼を洗っていたことに気付いた。
食器を洗い終えると、蒼井華和は寝室に行き、如月廷真の様子を確認してから、バスルームで簡単にシャワーを浴びた。
一方。
若松家。
若松満志と月島紅香夫妻はソファに座っていた。