「うん」蒼井華和は軽く頷いた。「まず痛み止めを打って、あなたは漢方薬を買ってきてくれる?」
「はい」
「紙とペンはある?」蒼井華和は続けて尋ねた。
「あります」若松峰也は振り返って物を取りに行った。「お嫂さん、ちょっと待ってください」
すぐに、若松峰也は紙とペンを持ってきた。「お嫂さん、どうぞ」
蒼井華和は紙とペンを受け取り、急いで薬の名前を書き記した。書き終わると、若松峰也に渡して「急いで行って戻ってきて」と言った。
「分かりました」若松峰也は紙を受け取り、走って出て行った。
蒼井華和はベッドの前に座り、手を如月廷真の額に当てて、体温を確かめた。
そして自分の額にも手を当ててみた。
よかった。
熱はない。
「にゃー」
まんたんがベッドに飛び乗り、如月廷真の顔の横まで歩いてきて、何度もにゃーにゃーと鳴いた。まるで如月廷真が反応しないことを不思議に思っているかのようだった。最後にはぷにぷにした小さな肉球を出して、如月廷真の顔を一発叩いた。
蒼井華和はまんたんが突然人を叩くとは思わなかったので、手で掴んで持ち上げた。「何してるの?そんなことしちゃダメ!」
まんたんは少し不満そうに一声鳴いた。
蒼井華和はそれを床に下ろし、鍼灸バッグを取り出した。
鍼灸バッグには三十六本の金針が入っていた。
若松峰也が薬を買って戻ってきた時、目にしたのはこんな光景だった。
少女がベッドの前に座り、手に金針を持って、一本一本如月廷真の体に刺していく。
一本一本が正確にツボを捉えていた。
一分の狂いもない。
クリスタルの照明が彼女の体を冷たい薄絹で包むかのように照らしていた。
遠くから見ると、言葉では表現できない武術の精妙さが漂っていた。
若松峰也は部屋の入り口に立ち、数秒間呆然としてから「お嫂さん、薬を買ってきました」と言った。
それを聞いて、蒼井華和は少し振り返り「煎じ薬の作り方は分かる?」
「はい」若松峰也は頷いた。
蒼井華和は続けて「紙に書いた説明通りに、キッチンで煎じてきて」と言った。
「分かりました」
如月廷真は長年薬を飲んでいたため、家には薬を煎じる道具が揃っていた。
若松峰也は薬をキッチンで煎じ始めてから、寝室に戻ってきた。「お嫂さん、薬は煎じ始めました。他に何か必要なことはありますか?」