「冗談じゃないわ」と蒼井華和は言った。
結城詩瑶も蒼井華和が冗談を言っているのだと思った。「もしあなたがミルクティーの大物なら、私はその大物の彼女ってことになるわね!」
蒼井華和はすぐに結城詩瑶から一歩離れた。「私は性的指向は正常よ」
上條迎子はその様子を見て笑いが止まらなかった。そして続けた。「迎子、あなたバカね!彼女になんてなることないでしょう?大物の娘になるべきよ。そんな凄い父親がいたら、人生の勝ち組じゃない?」
結城詩瑶は頷いた。「そうそう、じゃあ私はミルクティーの大物の娘!威張って歩けるような!」
蒼井華和は鼻を撫でながら、真剣に結城詩瑶を見つめた。「私にはあなたほど大きな娘は産めないでしょうね」
「華和、役になりすぎよ!」
蒼井華和は微笑んで、説明はしなかった。
結城詩瑶は蒼井華和の腕に寄り添い、物憂げな表情で言った。「私の周りの人はみんな凄いわね。華和は医術が神業みたいだし、バイオリンも弾けるし、成績も素晴らしい!私は勉強もダメだし、特技もない...」
「そんな風に考えないで、実はあなたも何もできないわけじゃないわ。地球に貢献はしているわよ」と蒼井華和は言った。
結城詩瑶は蒼井華和を見つめ、期待に満ちた表情で尋ねた。「じゃあ、私に何ができるの?」
もしかして、隠された才能があるのだろうか?
「二酸化炭素を変換できるわ」
それを聞いて、上條迎子は声を出して笑った。
結城詩瑶も笑ってしまった。「確かに地球への貢献は大きいわね。植物は私なしじゃ生きていけないもの!」
「蒼井さん!」
その時、後ろから突然声がした。
蒼井華和が振り返ると、篠崎登世が彼女の方へ歩いてくるのが見えた。
「篠崎会長」
篠崎登世は満面の笑みを浮かべ、蒼井華和を見つめながら言った。「蒼井さん、少しお話できますか?」
そう言って、傍らにいる上條迎子と結城詩瑶を見た。
二人は空気を読んで言った。「華和、私たちあっちで待ってるわ」
篠崎登世はようやく満足げな様子で、蒼井華和に微笑みかけた。「蒼井さん、あちらでお話しましょうか?」
「はい」
蒼井華和は軽く頷いた。
二人はカフェの前の席に座った。
篠崎登世はコーヒーを二杯注文した。
蒼井華和は「お水で結構です」と言った。
篠崎登世は蒼井華和を見た。「コーヒーはお好みではないのですか?」