091:強気な華和兄、即座に関係を断つ!_5

蒼井華和が二度目の拒否をすると、篠崎登世は眉をひそめた。

彼女がこれほど低姿勢なのに、蒼井家の養女は少々恩知らずだった。

篠崎登世という名前はバイオリン界で、多くの人々が求めてやまないものだ。

しかし蒼井華和は何度も拒否する!

これは一体どういうことだ?

篠崎登世はこれほど教養のない人に出会ったことがなかった。

蒼井華和の才能が極めて高くなければ、篠崎登世はとっくに怒り出していただろう。しかし、蒼井華和が本当に才能があるのだから仕方がない。

篠崎登世は心の中の怒りを抑えて、優しく言った。「蒼井さん、もう一度考えてみませんか?」

「篠崎会長のご厚意に感謝いたしますが、もう考える必要はありません」そう言って、彼女は紙幣を一枚取り出してカップの下に置き、椅子から立ち上がった。「用事がありますので、これで失礼します」

蒼井華和の後ろ姿を見て、篠崎登世は眉をひそめた。

良い素質を持った人材だと思っていたのに。

まさか、蒼井華和がこれほど傲慢で、少しの才能があるだけで天下を見下すことができると思っているのか?すべての人を軽視できると?

まさに若気の至りだ。

その時、篠崎登世は突然蒼井真緒のことを思い出した。

蒼井真緒は彼女を騙したが、蒼井真緒の礼儀作法は、明らかに蒼井華和より一段も二段も上だった。

やはり、名門のお嬢様は名門のお嬢様だ。素性の知れない野良犬には永遠に及ばないものだ。

上條迎子と結城詩瑶は路地の屋台に座り、麻辣湯を食べながら蒼井華和を待っていた。

蒼井華和が来るのを見て、結城詩瑶は好奇心を持って尋ねた。「華和、篠崎会長は何の用だったの?」

「ちょっと話をしただけよ」

蒼井真緒とは違い、彼女はこのことを自慢の種にすることはなく、当然篠崎登世を断った件も明かすことはなかった。

結城詩瑶もそれ以上は聞かず、続けて言った。「華和、あなたの分も麻辣湯を注文したわ。今、店主が作ってるところよ」

蒼井華和と親友になって長い時間が経ち、二人は蒼井華和の好みをよく知っていた。

麻辣湯では必ず油条と豆腐を注文し、わかめともやしも必須だった。

飲み物は佐藤みるくが一番のお気に入りだった。

「迎子は?」蒼井華和は結城詩瑶の向かいに座った。

「ミルクティーを買いに行ったわ」