「ありがとうございます、おばさま。お気持ちは嬉しいですが、私にはお金があります」蒼井華和は丁寧に断った。
その瞬間、早坂明慧は蒼井華和と如月廷真がある面で似ていると感じた。
結局、彼女が如月廷真にお金を渡そうとするたびに、如月廷真も同じように断るのだった。
二人とも仕事をしていない。
一人は遊んでばかりで、もう一人は学生。いったいどこからお金が出てくるのだろう?
「華和、おばさんには娘がいないから、あなたを娘のように思っているの。受け取ってちょうだい」早坂明慧はカードを再び蒼井華和の手に押し付けた。
早坂明慧のこの言葉は心からのものだった。
この時、彼女は本当に蒼井華和を娘のように思っていた。
蒼井華和はやはり断った。
仕方なく、早坂明慧はカードを引っ込めた。
ミルクティーを飲み終わった後、早坂明慧は蒼井華和を車で送ると申し出た。
蒼井華和は笑って断った。「結構です、おばさま。用事がありますので、自転車で帰ります」
早坂明慧は路側に停めてあるシェアサイクルを見て、驚いて言った。「華和、自転車に乗れるの?」
「はい」
早坂明慧は続けて言った。「実は私も自転車に乗れるようになりたいんだけど、なかなか機会がなくて」
そのとき、早坂明慧の携帯が鳴った。
早坂明慧は携帯を見てから、蒼井華和の方を向いて言った。「華和、おばさん用事があるから先に行くわ。時間があったら家に遊びに来てね」
「はい」蒼井華和は頷いた。
早坂明慧はバッグを持って、急ぎ足で去っていった。
蒼井華和は自転車のQRコードをスキャンした。
まさに出発しようとしたとき、突然早坂明慧から電話がかかってきた。
「華和、さっきのミルクティー店にカードを置いてきたから、取りに行ってちょうだい。家族なんだから、遠慮しないで」
蒼井華和がカードを受け取らないことを知っていたので、早坂明慧はミルクティー店にカードを置いていったのだ。
言い終わると、早坂明慧はすぐに電話を切り、蒼井華和に断る機会を与えなかった。
蒼井華和は自転車を止めて、ミルクティー店に戻ってカードを取りに行った。
これは早坂明慧のサブカードで、利用限度額はない。
実は、カードを渡すのは早坂明慧の突然の思いつきだった。