104:大物が慌てた!_6

「ありがとうございます、おばさま。お気持ちは嬉しいですが、私にはお金があります」蒼井華和は丁寧に断った。

その瞬間、早坂明慧は蒼井華和と如月廷真がある面で似ていると感じた。

結局、彼女が如月廷真にお金を渡そうとするたびに、如月廷真も同じように断るのだった。

二人とも仕事をしていない。

一人は遊んでばかりで、もう一人は学生。いったいどこからお金が出てくるのだろう?

「華和、おばさんには娘がいないから、あなたを娘のように思っているの。受け取ってちょうだい」早坂明慧はカードを再び蒼井華和の手に押し付けた。

早坂明慧のこの言葉は心からのものだった。

この時、彼女は本当に蒼井華和を娘のように思っていた。

蒼井華和はやはり断った。

仕方なく、早坂明慧はカードを引っ込めた。

ミルクティーを飲み終わった後、早坂明慧は蒼井華和を車で送ると申し出た。

蒼井華和は笑って断った。「結構です、おばさま。用事がありますので、自転車で帰ります」

早坂明慧は路側に停めてあるシェアサイクルを見て、驚いて言った。「華和、自転車に乗れるの?」

「はい」

早坂明慧は続けて言った。「実は私も自転車に乗れるようになりたいんだけど、なかなか機会がなくて」

そのとき、早坂明慧の携帯が鳴った。

早坂明慧は携帯を見てから、蒼井華和の方を向いて言った。「華和、おばさん用事があるから先に行くわ。時間があったら家に遊びに来てね」

「はい」蒼井華和は頷いた。

早坂明慧はバッグを持って、急ぎ足で去っていった。

蒼井華和は自転車のQRコードをスキャンした。

まさに出発しようとしたとき、突然早坂明慧から電話がかかってきた。

「華和、さっきのミルクティー店にカードを置いてきたから、取りに行ってちょうだい。家族なんだから、遠慮しないで」

蒼井華和がカードを受け取らないことを知っていたので、早坂明慧はミルクティー店にカードを置いていったのだ。

言い終わると、早坂明慧はすぐに電話を切り、蒼井華和に断る機会を与えなかった。

蒼井華和は自転車を止めて、ミルクティー店に戻ってカードを取りに行った。

これは早坂明慧のサブカードで、利用限度額はない。

実は、カードを渡すのは早坂明慧の突然の思いつきだった。