109:名実ともに第1位_5

彼には家族がいる。賭けるわけにはいかなかった。

我慢するしかない。

チャンスはまだまだある。

今回の試合は10万円の賞金だけだ。10万円のために命を賭ける必要はない。

「浩二、頑張れ!」

野田浩二は最初のカーブを順調に通過した。

彼にはわかっていた。できると。

カーブは想像していたほど難しくなかった。

おそらく。

もっと早く挑戦すべきだった。

会場は歓声に包まれた。

蒼井華和はバックミラーに映る追いついてきた野田浩二を見ても動揺せず、口角を上げながら加速を続けた。

野田浩二も加速を続けた。

その時。

また急カーブが現れ、野田浩二はハンドルを切ろうとしたが間に合わなかった。彼の手の動きがバイクのスピードについていけなかった。

バイクが速すぎた。速度を事前に計算してからカーブを曲がる必要があった。

ドン!

野田浩二のバイクはカーブを外れ、ガードレールに激突した。

煙が立ち込めた。

野田浩二は瞬時に意識を失った。

救助隊がすぐに担架を持って救助活動を開始した。

観客席の誰もがこんな展開になるとは思っていなかった。

野田浩二がUターンカーブを無事に通過した後、彼らの心理は野田浩二と同じだった。

カーブは想像していたほど怖くないと。

しかしこの瞬間。

現実は彼らに重い一撃を与えた。

「浩二は大丈夫か?」

「あのスピードじゃ、運良く生き残っても一生不自由な体になるだろうな!」

野田浩二の失敗は、多くの人々のカーブでの追い越しの考えを打ち消した。

蒼井華和のスピードは加速し続けていた。

キーッ!

急ブレーキの音が鳴り響いた。

36号のバイクはゴールラインに安定して停止した。

実況はこの時すでに興奮で言葉が不明瞭になっていた。「おお!なんということだ!10番選手は本当にかっこいい!まさに間違いなくダークホースだ!」

「10番選手の優勝、おめでとうございます!」

続いて、会場中から拍手が沸き起こった。

蒼井華和は慌てることなくバイクを降り、足が地面に着くや否や、習慣的にヘルメットを取ろうと手を上げかけたが、途中で何かを思い出したように、その動作を止めた。

その後、待機室へと歩き出した。

10分後、2台目のバイクが到着した。

2位は火華の戯だった。

3位は狼夜。