110:蒼井真緒は呆然とした

はい。

会場には八万人の観客がいた。

しかし、蒼井華和が勝つと賭けた人はたった八百人だった。

誰も10番の選手が勝つとは思っていなかった。

細身の女の子に見えた選手が。

主催者側も呆然としていた。

誰も、今日ダークホースが現れるとは思っていなかった。

主催者側は大儲けして、当然とても喜んでいた。

若松峰也は隣の男を見て、尋ねた。「三兄、どうして10番が必ず勝つと分かったんですか?」

「直感だ」如月廷真は答えた。

「直感ですか?」若松峰也は疑問に思った。

男は軽く頷いた。

若松峰也は頭を掻きながら、大きな目に疑問を浮かべた。

なぜ自分にはこんな直感がないのだろう?

待合室。

部屋の中は少し暗かった。

朝比奈瑠璃は椅子に座っていた。

そのとき、外から足音が聞こえ、そして扉が開く音がした。