はい。
会場には八万人の観客がいた。
しかし、蒼井華和が勝つと賭けた人はたった八百人だった。
誰も10番の選手が勝つとは思っていなかった。
細身の女の子に見えた選手が。
主催者側も呆然としていた。
誰も、今日ダークホースが現れるとは思っていなかった。
主催者側は大儲けして、当然とても喜んでいた。
若松峰也は隣の男を見て、尋ねた。「三兄、どうして10番が必ず勝つと分かったんですか?」
「直感だ」如月廷真は答えた。
「直感ですか?」若松峰也は疑問に思った。
男は軽く頷いた。
若松峰也は頭を掻きながら、大きな目に疑問を浮かべた。
なぜ自分にはこんな直感がないのだろう?
待合室。
部屋の中は少し暗かった。
朝比奈瑠璃は椅子に座っていた。
そのとき、外から足音が聞こえ、そして扉が開く音がした。