109:名実ともに第1位_3

「将棋を見守っている」と春野康雅は答えた。

春野遥澄は眉を少し上げ、「6番だ」と言った。

「うん」

春野康雅は群衆の中から6番の姿を見つけた。

現在、6番は上位5位に入っている。

「まあまあだな、爆発力はありそうだ」と言いかけて、春野遥澄は一瞬止まり、続けて「でも、10番の爆発力も悪くないと思う」と言った。

「10番?」春野康雅は笑い出し、コース上の大画面を指差して言った。「最後尾を走っているあの車のことか?」

「ああ」春野遥澄は軽く頷いた。

春野康雅はさらに大きく笑った。

「爆発力どころか、前の急斜面さえ上れるかどうか怪しいぞ」

バイクレースで急斜面は最も難易度の低い部分だ。

ただし、それは経験豊富なレーサーに限る。

春野遥澄は何も言わなかった。

ただ大画面を見つめていた。

彼女はゆっくりと他の選手たちの後ろを走っていた。

常に前の選手との距離を10メートル以内に保っていた。

まるで散歩でもしているかのように。

首位の29番車が急斜面を数秒で通過したのに対し、彼女は50秒以上かかった。

一見30数秒の差に過ぎないが、レース場では30秒は越えがたい距離だった。

彼女は元々最下位で、今やさらに大きく引き離されていた。

「10番を選ばなくて良かった!」

「笑えるな、この10番は冗談で出場してるのか?」

首位を走っているのは3番だった。

その勢いは凄まじかった。

しかし2位の野田浩二が猛追していて、プレッシャーはかなりあった。

「野田、頑張れ!頑張れ!」

「焦る必要はない、前にまだ斜面がいくつかある。野田はそこで加速すればいい」

「やっぱり3番はシード選手だったんだ!」

「早まるな、野田はもう5戦勝っているんだ。野田を信じている」

春野康雅は6番の将棋を見守る様子を一瞬も目を離さずに見つめていた。

額には冷や汗が次々と浮かんでいた。

その様子は、まるで自分がレースに出ているかのように緊張していた。

横では黙々と10番に向かって旗を振って声援を送っていた。

「10番お姉さん、頑張って!応援してるよ!」

その時。

轟という音が響いた!

6番の将棋を見守る車が突然アクセルを全開にし、車体が一気に飛び出した。

5位から1位へ!

「やった!」春野康雅は両手で拳を握り、興奮を抑えきれなかった。