109:名実ともに第1位_3

「将棋を見守っている」と春野康雅は答えた。

春野遥澄は眉を少し上げ、「6番だ」と言った。

「うん」

春野康雅は群衆の中から6番の姿を見つけた。

現在、6番は上位5位に入っている。

「まあまあだな、爆発力はありそうだ」と言いかけて、春野遥澄は一瞬止まり、続けて「でも、10番の爆発力も悪くないと思う」と言った。

「10番?」春野康雅は笑い出し、コース上の大画面を指差して言った。「最後尾を走っているあの車のことか?」

「ああ」春野遥澄は軽く頷いた。

春野康雅はさらに大きく笑った。

「爆発力どころか、前の急斜面さえ上れるかどうか怪しいぞ」

バイクレースで急斜面は最も難易度の低い部分だ。

ただし、それは経験豊富なレーサーに限る。

春野遥澄は何も言わなかった。

ただ大画面を見つめていた。

彼女はゆっくりと他の選手たちの後ろを走っていた。