111:大物の姿勢_5

蒼井華和は真剣な様子で言った。「当事者は物事の本質が見えないものですから」

橘忻乃「......」

結城詩瑶「......」

素晴らしい!

蒼井華和はカバンを手に取り、机の上の恋文も一緒に入れて、ゴミ箱の方へ歩いていった。

ざらざらと音を立てながら、中の恋文を全部捨てた。

ゴミ箱はたちまち一杯になった。

恋文を捨てたばかりのところに、一人の男子生徒が蒼井華和の前に来て、顔を真っ赤にしながら一通の恋文を差し出した。

「蒼、蒼井さん、受け取ってください」

蒼井華和は思春期真っ只中のこの男子生徒を見て、思わず手を伸ばして彼の頭を軽くたたき、年長者のような態度で「坊や、しっかり勉強して、大きくなったら国のために尽くすのよ」

そう言うと、彼女は席に戻った。

男子生徒は真っ赤な顔で自分のクラスに走って戻った。

隣のクラスでは。

すでに蒼井華和が恋文をゴミ箱に捨てたことについて噂が広がっていた。

「蒼井華和って失礼すぎるわ。どうして恋文を全部ゴミ箱に捨てるのよ!」

「そうよそうよ、あの男子たちは何を考えているのかしら、こんな失礼な人を好きになるなんて」

「何よ?蒼井さんが気に入らないからって、あなたたちみたいな陰口を叩く口さがない女たちの方がいいっていうの?」ショートカットの女子生徒が我慢できずに席から立ち上がった。「あなたたちの言う通りなら、蒼井さんは一人一人に土下座でもして、恋文をくれてありがとうって言わなきゃいけないってこと?」

ゴミ箱に捨てずに全部取っておくべき?

男子たちに期待を持たせる?

それは礼儀正しさじゃなくて、プレイヤーってやつよ。

クラスは一瞬にして静まり返った。

ショートカットの女子生徒はそう言うと、また席に戻った。

帝都にて。

如月大爺様が急病で倒れ、病院に運ばれ二度の危篤状態を告げられた。

如月志弘は妻子と嫁を連れて急いで帝都に駆けつけた。

如月廷臣と如月廷遥は来ていたが、如月廷真だけが姿を見せなかった。

「兄さん、どうして廷真は来ていないんですか?」如月大爺様の次男、如月志邦が尋ねた。

如月廷臣が笑いながら答えた。「叔父さん、ご存知でしょう。廷真は忙しい身ですから、簡単には抜けられないんです」