106:ただ者ではない_2

子供を失くしたという気持ちは分かります。

かつての彼女のように。

交通事故で夫と息子、そして息子の嫁を失いました。

もし乳飲み子の孫がいなかったら、彼女も生きていけなかったでしょう。

人は精神的支柱と希望がないのが一番怖いのです。

蒼井大婆様はため息をつき、「あなたの言うことは分かるけど、事情はそう単純じゃないの……」

蒼井紅音の立場から考えると、もし彼女が見つかって、家に自分と同じくらいの年の姉がいて、しかも自分が失踪したすぐ後に両親が新しい娘を養子に迎えていたとしたら。

蒼井紅音はどう思うでしょうか?

それに、蒼井紫苑は扱いやすい相手ではありません。

「稲川みのり、何事もポジティブに考えなさい」須藤大婆様は慰めるように言いました。「今のあなたに一番大切なのは、毎日楽しく過ごして、体調を整えて、子供を見つけ出し、彼女の大学卒業式や結婚式、そして曾孫のお食い初めに参加することよ」

卒業式、結婚式、お食い初め……

その言葉を聞いて、蒼井大婆様の目は輝きに満ちました。

でも……

本当にそんな日が来るのでしょうか?

須藤大婆様は彼女の心中を見透かし、笑いながら言いました。「私を信じなさい。きっと子供は見つかるわ。みのり、あなたの幸せはこれからよ」

春日吉珠も同意して言いました。「おばさまの仰る通りです。諦めなければ、必ず紅音ちゃんを見つけられます。私たちの大家族はまだ一度も家族写真を撮ったことがありませんから、紅音ちゃんが帰ってきたら、家族写真を撮りましょう」

「そうね、家族写真を撮りましょう」

蒼井大婆様は笑顔で頷きました。

きっとその日を待つことができるはずです。

食事が終わると、蒼井大婆様は春日吉珠と須藤大婆様に帰るよう促しました。

須藤大婆様は笑いながら断りました。「いいえ、結構です。私の長男が後で迎えに来ると言っていますから」

女性を見る目が悪いという点を除けば、須藤悠翔は他の面では非常に優れていて、ほとんど欠点がありませんでした。

「そう、じゃあもう少しお話ししましょう」

「ええ」

二人が少し話をしていると、須藤悠翔が到着しました。

「お婆ちゃん」

須藤悠翔を見て、須藤大婆様は笑顔で立ち上がり、「時雨越、こちらはお婆ちゃんが若い頃の戦友よ。蒼井婆ちゃんと呼びなさい」