如月佳織は冷たく鼻を鳴らし、「人の心は変わるものよ!私は自分の目で見たものしか信じない」
如月廷臣は早坂明慧の側に寄り、やや責めるような口調で「母さん、どうして父さんを止めなかったんですか?」
早坂明慧が少しでも説得していれば、事態はここまで悪化しなかったはずだった。
「私も華和を信じているからよ」と早坂明慧は答えた。
如月廷臣は母親を信じられない様子で見つめた。
「母さん、何を言ってるんですか?」
彼にはこの言葉が早坂明慧の口から出たとは到底信じられなかった。
結局のところ、以前の早坂明慧は蒼井華和を嫌っていたのだから。
早坂明慧は先ほどの言葉をもう一度繰り返した。
「母さん、あまりにも分別がないですよ!」如月廷臣は声を抑えながら、憤慨した表情で言った。「母さんは前とは違います!」
以前の早坂明慧は、せいぜい少し偏愛があるだけだった。
今は?
完全に正気を失っている!
早坂明慧は我慢強く「私の話を聞きなさい。華和はあなたたちが想像しているような人間じゃないわ。だから今は焦らず、手術が終わるのを待ちましょう」
「今焦ったところで何になるんだ?」如月廷遥はため息をついた。
時間は一分一秒と過ぎていった。
あっという間に二時間が経過した。
手術室のランプはずっと点いたままだった。
極度の緊張状態の中、如月志弘と早坂明慧はかえって落ち着きを取り戻していた。
手術室内。
手術は整然と進められていた。
「止血鉗子」
「ガーゼ」
「......」
手術台の前に立つ少女は、青い手術着を身につけ、マスクをしており、澄んだ桃色の瞳だけが見えた。
彼女はゆっくりと確実に一つ一つの動作を行い、全く慌てる様子もなく、むしろ経験豊富な年配の医師よりも安定していた。
傍らの研修医たちは思わず驚きの表情を浮かべた。
蒼井華和は手術をしながら、彼らに説明も加えた。「ここの大動脈は手早く処置する必要があります......」
彼女は細かく説明し、目は手術に集中していた。
数名の研修医も熱心に聞き入っていた。
ピッピッピッ--
傍らの心拍モニターも安定した音を刻んでいた。
手術室の温度は徐々に上昇していった。
雪のように白い額に細かい汗が浮かんできた。