如月廷真の直筆のサイン。
如月大爺様が亡くなれば、すぐに効力を発し、そのとき、如月志弘一家は何も相続できないどころか、長年苦労して築いた蘭木工房まで失うことになる。
だから、この時点で早坂明慧と揉め合う必要はなく、ただ静かに死亡通知を待つだけでよかった。
さらに一時間が経過。
手術室のライトがそのまま点いている。
外で待つ人々は、不安な表情を浮かべていた。
しかし、如月大爺様の容態を本当に心配しているのは如月志弘と早坂明慧だけだった。
他の人々は……
気にかけているのは危篤通知書だけだった。
結局のところ、如月大爺様が息を引き取れば、堂々と遺産分割ができるのだから。
ギィッ!
その時、空気を切り裂くようなドアの開く音が響いた。
その瞬間、全員が手術室の中を覗き込んだ。