薄い唇を軽く結び、少し冷たい表情を浮かべていた。
しばらくして、彼は蒼井華和の前に歩み寄り、手に持っていた飴細工のりんご飴を彼女に渡した。
「帝都特有の飴細工のりんご飴だ。作り方が他の地域とは違う。食べてみてくれ」
蒼井華和は手を伸ばして受け取り、頬にえくぼを浮かべながら「さっきはこれを買いに行ってたの?」
「ああ」如月廷真は軽く頷いた。
蒼井華和はりんご飴を一口かじった。
種が取り除かれていた。
一口で満足感が広がり、酸味と甘みのバランスが絶妙で、特有の香りも漂う。確かに普段食べるりんご飴とは違った。
「どう?」如月廷真が薄い唇を開いて尋ねた。
「とても美味しい」蒼井華和は頷き、一気に三つ食べた。
しばらくして、彼女はりんご飴を如月廷真に差し出した。「あなたも食べてみる?」
口元に差し出されたりんご飴を見て、如月廷真は一瞬固まり、耳の付け根が薄く赤くなった。
男女の別がある。
二人で同じりんご飴を食べるのは、少し不適切かもしれない。
しかし蒼井華和を見ていると、断る言葉が出てこなかった。
しばらくして、如月廷真はりんご飴を一つかじった。
酸味と甘みが舌先に広がった。
彼は今まで知らなかった。りんご飴がこんなにも美味しいものだとは。
まさに至高の味だった。
「美味しい?」蒼井華和は彼を見つめながら尋ねた。
「とても甘い」如月廷真は薄い唇を開いて答えた。
蒼井華和は続けて「そうだ、豆乳はどうだった?美味しかった?」
「味が少し変わっていて、地方の人には慣れないかもしれない」如月廷真は答えた。
そう言われて、蒼井華和は非常に興味を持った。「どのくらい変わっているの?」
食べ物の味がいくら変わっているとしても、どこまで変わり得るというのだろう?
如月廷真は「うん、おそらく腐ったような味だ」と言った。
「試しに飲んでみない?」蒼井華和は提案した。
如月廷真は蒼井華和を見つめ「本当に?」
「うん」蒼井華和はわくわくした様子だった。
「わかった」如月廷真は軽く頷き「あそこに帝都の本格的な豆乳のお店があるんだが、見に行ってみるか?」
蒼井華和は如月廷真の後を追った。
これは帝都の老舗だった。
そのため、食事時間ではないにもかかわらず、店内は満席だった。
二人は数分並んで、やっと空席ができた。