如月大爺様の体調は現在最悪で、病院も手の施しようがない状態だった。
如月志弘はあれこれ考えた末、やはり蒼井華和に来てもらうのが一番確実だと思った。
結局のところ、蒼井華和の医術は確かに優れているのだ。
もしかしたら蒼井華和に何か良い方法があるかもしれない。
今は僅かな希望でも、如月志弘は諦めたくなかった。
それを聞いて、早坂明慧は眉をひそめた。「考えは良いけど、華和が来ても、山本ゆきおと佳織は彼女を信用するかしら?」
蒼井華和はまだ18歳で、子供同然だ。
それに彼女の立場は微妙だ。
如月家の者たちが彼女を信用するはずがない。
早坂明慧は続けて言った。「一歩譲って、山本ゆきおと佳織が華和を信用して、お父様の治療を任せたとしても。でも、あなた考えたことある?お父様は高齢だし、手術中に何も起こらないなんて誰も保証できない。もし何か不測の事態が起きたら、華和にどう対処させるつもり?」
他の医師なら仕方ないが、蒼井華和の場合、如月家の者たちは必ず全ての責任を彼女に押し付けるだろう。
如月志弘は一瞬固まった。
蒼井華和を呼ぶことばかり考えて、こういったことまで考えが及んでいなかった。
如月大爺様の件は、もはや一人の問題ではない。
今や一族全体に関わる問題となっている。
蒼井華和を巻き込めば、事態はより一層混乱するだけだ。
言い終わると、早坂明慧は如月志弘を見つめて、「どう思う?」と尋ねた。
如月志弘は頭が痛くなり、こめかみを押さえながら言った。「君の言う通りだ。確かに私の考えが浅はかだった。」
早坂明慧は如月志弘にお茶を注ぎ、「焦らないで。ゆっくり考えましょう。お父様は善人だから、きっと天が助けてくれる。全てが良い方向に向かうはずよ。」
「うん。」如月志弘はお茶を一口飲んで、また尋ねた。「廷真と連絡は取れた?」
早坂明慧は首を振った。「まだです。」
予想していた結果とはいえ、如月志弘はやはり腹が立った。
なぜ如月廷真はこういう時になると必ず姿を消してしまうのか、理解できなかった。
「廷臣と廷遥は?いつ来る?」如月志弘は続けて尋ねた。
早坂明慧は答えた。「明日の午後4時の飛行機です。」
「午後?」
「はい。」