コンピューターの天才は少ないが、確かに存在する。
有名なハッカーHは、13歳で名を馳せた。
残念ながら。
Hは既に何年も表舞台から姿を消している。
「例外はないはずだ」と須藤悠翔は言った。
他の人なら奇跡が起こるかもしれない。
でも蒼井華和は......
つま先で考えても、あり得ない。
「わかった」と林凛夜は溜息をつきながら言った。「君が彼女じゃないと言うなら、監視カメラの映像を見続けよう」
そう言って、林凛夜は再生ボタンを押した。
監視カメラの映像が再び流れ始めた。
しばらく見た後、林凛夜は笑いながら言った。「時雨越兄、もしその人が本当に蒼井さんだったら、どうする?」
「馬鹿げている」須藤悠翔は林凛夜の言葉を無視するように続けた。「いつになったら真面目になるんだ?」
林凛夜は肩をすくめた。「時雨越兄、視野が狭すぎるよ」
そして続けて言った。「賭けをしないか?もし蒼井さんが私たちの探している人物だったら、女装するってのはどう?」
須藤悠翔は林凛夜を見つめ、一字一句はっきりと言った。「蒼井華和には私と賭けをする資格もない」
林凛夜は呆れた様子だった。
「時雨越兄、そこまでする必要ある?そんなに彼女のことが嫌いなの?」これはもう人格攻撃のレベルだった。
女の子にこんな態度をとるのは、本当にいいのだろうか?
「蒼井さんは一体何をしたんだ?」林凛夜は好奇心を抑えきれずに尋ねた。
須藤悠翔は説明する気もなく、林凛夜の言葉を聞いていないかのように映像を見続けた。
彼が黙っているなら、林凛夜もこれ以上無駄な質問はしなかった。
しかし二人は午後いっぱい見続けても、怪しい人物は見つからなかった。
須藤悠翔はかなり憂鬱そうだった。
林凛夜は続けて言った。「どうしようもないなら、朝倉俊真の方から手を付けるしかないかもね」
結局、朝倉俊真は天才ハッカーと知り合いなのだから。
須藤悠翔はこめかみを揉んだ。
今のところ、それしか方法がないようだった。
スイーツショップを出て、蒼井華和は蒼井大婆様を支えながらビーチを散歩していた。
夕陽が沈みかけていた。
金色の夕陽が海面全体を覆っていた。
この光景は壮大で美しかった。
この時、蒼井大婆様の気分はかなり良くなっていて、笑顔で言った。「華和、私、海辺で夕日を見るのは初めてよ」