彼女のクラスメートはメイサーラティで来たのよ。
蒼井華和ね。
一生自転車の後ろに乗るのがお似合いだわ。
そう思うと、蒼井紫苑の目には一層得意げな色が浮かんだ。
こんな婚約者なら、蒼井華和の人生もこれまでね。
そう言って、蒼井紫苑は車の傍に立っているクラスメートを見た。「駿介、姉を送ってあげてくれない?」
真壁駿介は蒼井華和を一目見て、目に驚嘆の色を浮かべた。
紫苑の姉はあまりにも美しすぎる。
「もちろんいいよ」真壁駿介は頷いた。
自転車とメイサーラティ、頭のある人なら、どちらを選ぶべきかわかるはずよ。
この男、自転車で女の子を口説こうなんて?
まったく夢物語ね!
「結構です、ありがとう」蒼井華和は丁重に断り、後ろに乗った。「如月兄さん、行きましょう」
「ああ」如月廷真は軽く頷いた。
二人は長居せず、すぐに自転車で去っていった。
その姿は雪と風の中に消えていった。
真壁駿介は二人が去った方向を見つめ、興味深そうに尋ねた。「紫苑、あの人は誰?」
「私の姉よ」蒼井紫苑は答えた。
真壁駿介は目を丸くした。「ご両親が探し出したっていうあの人?」
田舎育ちだって聞いていたのに。
どうしてこんなに綺麗なの。
白いダウンジャケットを着て、雪の中に立っている姿は、まるで仙女のように人々を魅了した。
「うん」蒼井紫苑は頷いた。
真壁駿介は続けた。「お姉さん、意外と綺麗だね」
蒼井紫苑は軽く頷き、笑いながら言った。「そうね。でも、未来の義兄もかっこいいって気付かなかった?」
未来の義兄?
真壁駿介の目には信じられない色が浮かんだ。「お姉さんに彼氏がいるの?」
「彼氏じゃないわ」蒼井紫苑は首を振った。
「じゃあ、何?」真壁駿介は尋ねた。
蒼井紫苑は笑いながら言った。「婚約者よ。姉の河内市での婚約者」
真壁駿介は蒼井華和にもう婚約者がいるとは思わなかった。「さっきの人が婚約者?」
「うん」
真壁駿介は運転席のドアを開けながら、興味深そうに尋ねた。「婚約者なのに自転車に乗ってるの?」
「知らないの?」蒼井紫苑は神秘的な表情を作った。
「何を?」真壁駿介は尋ねた。
蒼井紫苑は続けた。「姉の婚約者は河内市の如月家の三男よ」
如月廷真と言っても知らない人がいるかもしれない。