綺麗で華やかな花火も彼女の前では、ただの無機質な背景にすぎなかった。
彼女は花火よりも輝いていた。
如月廷真は携帯の写真を見ながら、口角が微かに上がった。
全ての線香花火を燃やし終えた後、蒼井華和の視線は隣の花火に落ちた。
如月廷真は即座に彼女の考えを察し、薄い唇を開いて、「今打ち上げる?」
「うん」蒼井華和は軽く頷いた。
如月廷真はライターを持って近づき、すぐに導火線に火をつけた。
その後、素早く蒼井華和の側に戻り、手で彼女の耳を覆った。
無意識の動作だった。
蒼井華和は少し目を上げ、彼の美しい横顔がちょうど見えた。
さらに上を見上げると。
そこには深い鳳眸があり、今、彼の瞳には空の花火が映り込んでいた。
二人は極めて近く、蒼井華和は彼から漂う微かなタバコの香りさえ嗅ぐことができた。
とても良い香り。
シュッ!
その時、花火が空へ打ち上がり、空に完璧な弧を描いた。
そして「ドーン」という音が響いた。
花火が一斉に開いた。
花火が空で開くにつれ、周りの全てが昼のように明るく照らされた。
幾重にも重なり、まるで花が咲き誇るように、また百鳥朝凰の勢いを見せた。
絢爛豪華。
「すごくきれい!」蒼井華和は空の花火を見て感嘆の声を上げた。
広場の周りの人々も、この花火を見て驚嘆の声を上げていた。
「この花火、すごくきれいだね!」
「この花火知ってる、前にL国の花火デザイナーのピーターがデザイン画を公開してたの。このデザインは友人のために特別に作ったもので、世界に一つしかないって聞いたわ!」
「まさかここで見られるなんて。」
誰かがこの花火をネットに投稿した。
動画は瞬く間に拡散した。
【やばい、やばい!帝都はやっぱり大物が集まる場所だな!】
【こんな綺麗な花火が見られて、人生損してない。】
【今夜フェニックス広場に行かなかったの後悔!】
【今から行っても間に合う?】
【本当に綺麗だった!】
翌日の朝。
元日。
蒼井家の居間は賑やかで、既に年始の挨拶に来る人がいた。
蒼井修誠は玄関に立って、「明けましておめでとうございます。この対聯は私の娘の紅音が書いたものです。まだまだ未熟で、皆様にお恥ずかしい限りです!」
「そうそう、紅音が書いたんです。」
「うちの紅音の字はまあまあですよ!」