どの母親も、自分の娘を悪名高いダメ人間と結婚させたくはないものだ。
篠崎澪もそうだった。
以前、蒼井華和が河内市にいた時は仕方がなかったが、今は帝都に戻ってきている。
篠崎澪は蒼井華和を見つめながら続けた。「紅音、あなたはもう河内市とは何の関係もないわ。だから如月廷真とも何の関係もないはず。そもそも、あなたと彼との婚約なんて笑い話よ。ママはあなたに彼との関係を断ち切ってほしいの。あなたにはもっと良い人がふさわしいわ」
蒼井華和の前途は明るく、まだ若いのだから、これからもっと優秀な男性に出会えるはずだ。
如月廷真のような男に時間を無駄にする必要はない。
蒼井華和は篠崎澪を見つめ、静かな声で言った。「ママ、私が望まないことは、誰も強制できないわ」
篠崎澪は眉をひそめた。「紅音、それはどういう意味?」
一瞬、彼女は蒼井華和の言葉の意味が分からなかった。
蒼井華和は真剣な表情で続けた。「ママ、私は蒼井家と縁を切ったけど、それは如月廷真との婚約には影響しないわ」
河内市では、誰もが如月廷真をダメ人間だと知っている。
蒼井華和の答えは、篠崎澪の予想を超えていた。
篠崎澪は目を見開いて蒼井華和を見つめ、その目には驚きの色が満ちていた。
蒼井華和は言葉を続けた。「ママ、あなたが知っている如月廷真は、他人の評価に過ぎないわ。それは本当の彼じゃない。あなたが想像しているほど、彼はダメな人間じゃないの。私が蒼井家と縁を切っていた時期も、ずっと私を助けてくれたのは彼よ。彼はとても素晴らしい人なの。だから、私は彼と一緒に歩んでいくわ」
実際、お金なんてどうでもよかった。結局、蒼井華和にはお金が困ることはないのだから。
最も重要なのは、如月廷真がイケメンだということだ。
蒼井華和は顔フェチなのだ!
毎日イケメンを見ていれば、ご飯も何杯でも食べられる。
そう考えると、蒼井華和は目を細めて微笑んだ。
シックスパックの婚約者を断れる人なんているだろうか?
篠崎澪はこの事実を受け入れがたく、続けた。「紅音、あなたはまだ若くて、愛情と結婚の本質が分からないのよ。一人が如月廷真はダメだと言うなら、その人の誤解かもしれない。でも大勢の人が如月廷真に問題があると非難するなら、それは本当に彼の問題なのよ」
蒼井華和はまだ十八歳だ。