西園寺雅乃は深いため息をつき、「私たちが妊娠しないのは避妊のせいだって本当?」
「はい」蒼井華和は軽く頷いた。
西園寺雅乃は続けた。「でも、うちには避妊具なんて一つもないのに、どうやって避妊するの?」
男性の避妊にはコンドームが必要でしょう!
彼女は死人じゃないんだから、避妊しているかどうかくらい分かるはずよ!
蒼井華和は続けた。「男性の避妊方法は色々あって、必ずしもコンドームを使う必要はありません」
そう言って、少し間を置いて、「もちろん、これは貴方が避妊していない場合の話です。結果によっては受け入れがたいかもしれませんが、受け入れる必要があります。旦那様をよく観察されることをお勧めします。意外な発見があるかもしれません」
女が強く男が弱いカップルは問題が起きやすいものです。
特に西園寺雅乃は数百億の資産を持つ富豪だけに。
西園寺雅乃は呆れて笑った。「蒼井さん、なぜ私たち夫婦の関係を壊そうとするのか分かりませんが、私はそんな簡単に人の言うことを信じる人間じゃありません。出口はあそこです。すぐに出て行ってください!」
そう言って、西園寺雅乃は須藤佳希の方を向いた。「佳希姉、申し訳ないけど、もうこれ以上我慢できません!彼女を連れて行ってください」
この小娘は実力はないくせに、人の仲を裂くのは上手いものね。
彼女には直感があった。このまま蒼井華和に関係を壊されるままにしていたら、彼女と駿介の間に問題がなくても、何か問題が起きるに違いない。
それを聞いて、須藤佳希も困った様子を見せた。
元々は西園寺雅乃が子供を望んでいたから、蒼井華和を紹介したのに。
まさか、こんな事態になるとは。
須藤佳希は蒼井華和を見て、申し訳なさそうな表情を浮かべた。「紅音」
蒼井華和はこの件を気にしていない様子で、「行きましょう、須藤叔母」
須藤佳希は蒼井華和の後を追った。
西園寺家を出た後、須藤佳希は申し訳なさそうに蒼井華和を見た。「紅音、本当にごめんなさい。こんな思いをさせてしまって。こんなことになるとは思わなかったわ」
蒼井家のお嬢様である彼女に西園寺雅乃の診察を頼むこと自体が、身分を下げることだったのに。
まさか、西園寺雅乃にこんな扱いを受けるとは。
「大丈夫です、須藤叔母。貴方のせいではありません」蒼井華和は静かな声で答えた。