152:正体を現した、大規模な顔面打ち現場(2更)

蒼井華和という蒼井家のお嬢様は、一度蒼井家を離れてしまえば、何者でもなくなってしまう。

でも、私は違う。

私は蒼井家の次女であるだけでなく、KV研究室の唯一の女性メンバーであり、帝都大学金融学部の在学生でもある……数々の大賞を受賞しており、たとえいつか蒼井家を離れることになっても、私は依然として輝かしい人生を送ることができる。

蒼井華和は……

河内市のあの役立たずと結婚して、平凡な人生を送るしかないのだ。

そう考えると、蒼井紫苑は口元に笑みを浮かべながら、蒼井遥真を見上げた。「お兄様、もしJ様のファンでしたら、私がサインをもらってきますよ」

「ああ、それはいいね」蒼井遥真は頷いた。

蒼井紫苑は蒼井華和の方を向いた。「お姉様も必要ですか?」

蒼井華和はコップに残った最後の豆乳を飲み干して、「結構です、ありがとう」

必要ない。

考えてみれば当然だ。

結局、蒼井華和はJ様が誰なのかも知らないのだから。

蒼井華和の世界では、おそらくスクリーンに映る芸能人だけが大物なのだろう。

蒼井紫苑は微笑んで言った。「お姉様が誰か尊敬する方がいらっしゃれば、私に言ってくださいね。これからもこういう機会はたくさんありますから」

やはり、私と蒼井華和は違うのだ。

蒼井華和は「うん」と返事をした。

蒼井華和のこの態度を見て、蒼井陽翔は不満げに眉をひそめた。蒼井紫苑が親切にサインをもらおうと言ったのに、蒼井華和は全く気にも留めていないような様子だった。

食事が終わると、蒼井華和は二階に上がってパソコンを開き、朝比奈瑠璃に補習を始めた。

以前と比べると、朝比奈瑠璃は大きく進歩していた。

朝比奈瑠璃の補習が終わった後、午後には須藤佳希が蒼井華和を迎えに来て、西園寺家へ向かった。

今日は診察の日だった。

数日間薬を飲んでいたが、西園寺雅乃にはまだ反応が見られなかった。彼女は悩ましげに蒼井華和を見つめて言った。「蒼井さん、もう少し続けた方がいいでしょうか?」

四ヶ月かかって妊娠した人もいるのだから。

「いいえ、真壁奥さま。もう薬を飲む必要はありません」蒼井華和は西園寺雅乃の手首から指を離した。

西園寺雅乃は蒼井華和を見つめ、目に驚きの色を浮かべた。「どうしてですか?」

今日は真壁駿介は家にいなかった。