須藤佳希がこれ以上この件について言及しないのであれば、それでよしとしよう。
だから、須藤佳希が来たとき、西園寺雅乃はいつも通り礼儀正しく接した。
「佳希姉」
須藤佳希は続けて言った。「あなたの旦那さん、家にいないの?」
「ええ」西園寺雅乃は頷いた。
須藤佳希は家の中を見て、「雅乃、昨日私が言ったことは確かに少し感情的すぎたわ。でも……」
彼女の言葉が終わらないうちに、西園寺雅乃に遮られた。「分かってます、佳希姉。私たち長年の姉妹なんだから、私のことを思ってくれているのは分かってます」
それを聞いて、須藤佳希は興奮して西園寺雅乃を見つめた。「雅乃、本当にそう思ってるの?」
たった一晩で西園寺雅乃が理解してくれたことに、彼女は驚いた。
それは彼女にとって嬉しい驚きだった。
「もちろんです」西園寺雅乃は頷いて、「でもこれは私たちの駿介のおかげなんです。彼が私を説得してくれたんです!だから、佳希姉、これからは駿介に偏見を持たないでください」
須藤佳希は呆れた。
結局のところ、真壁駿介のことなのか。
「つまり真壁駿介の言うことは何でも信じて、私の言うことは全部嘘だっていうの?」須藤佳希は反問した。
「もちろんそうじゃありません」西園寺雅乃は続けた。「そうそう佳希姉、一つお話があります」
「何?」
西園寺雅乃は須藤佳希を見て、「よく考えた末、駿介と一緒に子供を養子に迎えることに決めたんです」
二人は一年以上も妊活をしていたが、西園寺雅乃はもうこれ以上時間を無駄にしたくなかった。
それを聞いて、須藤佳希は驚いて言った。「そんなに急いで?」
西園寺雅乃は説明した。「昨夜駿介とこの件について話したんです。彼の友達の友達の家に子供がいて、最近養子に出そうとしているそうなんです」
「今時、自分の子供を人に託す人がいるの?」
「そうなんです。その子の両親が交通事故で亡くなって、両親とも一人っ子で、両家とも祖父母がいないので、孤児院に送らなければならない状況で、今手続きを進めているところなんです。だから私たち、その子を引き取ることを考えているんです」
西園寺雅乃は続けた。「ちょうどその子は今年まだ数ヶ月で、育てやすいし、この機会を逃したら、また同じような機会に巡り会うのは難しいと思うんです」