須藤佳希は、若い女性と買い物をしている真壁駿介を見て、怒りと興奮が入り混じった。
西園寺雅乃を裏切った真壁駿介に怒りを感じた。
雅乃が彼にあれほど尽くしていたのに!
男なんて本当に薄情者だわ。
興奮したのは、ついに証拠を見つけたことだった。これで雅乃も真壁駿介の本性が分かるはず!
そう思うと、須藤佳希はすぐにスマートフォンを取り出し、この場面を撮影しようとした。
しかしポケットを探ってみると、スマートフォンが見つからない。
須藤佳希はそこで思い出した。先ほどエステサロンで施術を受けていて、まだエステの服を着たままだったことを。すぐにサロンへ戻ることにした。
すぐにスマートフォンを取って写真を撮らなければ。
その時、真壁駿介も向かい側にいる須藤佳希に気付いた。
まずい。
真壁駿介は胸がドキッとし、すぐに朝日奈涼香を連れて反対側へ歩き出した。
突然引っ張られて歩かされた朝日奈涼香は不機嫌な顔をして、「どうしたの!まだ支払いもしてないのに!」
彼女はバッグを気に入っていた。
価値は百万円。
真壁駿介にカードで支払ってもらおうとしていたところ、突然引っ張られて連れて行かれた。
「今度買おう。今は早く帰って。」真壁駿介は言った。
朝日奈涼香も何か様子がおかしいことに気付き、「奥さんが来たの?」
「彼女の友達が私たちを見たみたいだ。」真壁駿介は冷静さを保っていた。
それを聞いた朝日奈涼香は、すぐに真壁駿介の袖をつかみ、不安そうな表情で「どうしよう?」
西園寺雅乃に見つかったら、セレブ妻の夢は砕け散ってしまうじゃない?
「先に帰って」真壁駿介はすでにより良い計画を思いついていた。「後は私が上手く処理する。」
「分かった!気を付けてね。」朝日奈涼香は頷いて、その場を去った。
真壁駿介は洗面所に行き、服装を整え、持ち歩いている香水を取り出して身体に吹きかけた。
これは雅乃がよく使う香水だった。
万全の準備を整えた真壁駿介は、電話をかけた。
一方。
須藤佳希がスマートフォンを取りに戻って来た時には、向かいの高級ブランドショップには真壁駿介とあの女性の姿はなかった。
「どこ行ったの?」須藤佳希は眉をひそめた。「どこに消えたの?」
ほんの一瞬目を離した隙に、姿が見えなくなってしまった。
どこへ行ったのだろう?