157:如月廷真は静園さんだった!

その言葉を聞いて、早坂明慧は黙っていた。

彼女は自分のことが分からない人間ではなかった。

以前、蒼井華和がまだ蒼井家の養女だった頃でさえ、如月廷真と付き合うのは身分不相応だったのに、まして今や蒼井華和は蒼井家のお嬢様なのだ。

蒼井家とはどんな家か?

帝都随一の名家である。

帝都サークル全体が取り入ろうとする家柄だ。

蒼井家には三男二女がいる。

長男の蒼井琥翔は実業家で、ビジネス界では恐れられる死神として知られ、若くして既に威風堂々たる人物となっている。

次男の蒼井遥真は著名な芸術の巨匠で、若くして名を馳せ、一枚の絵が一億円で落札されるという記録を打ち立てた。

三男は芸能界で絶大な人気を誇る大スター俳優だ。

数々の代表作を持つ。

まさに一世代の青春の象徴だ。

そして末娘の蒼井紫苑。