如月廷真の心臓は激しく鼓動していた。
全身に力が漲っていた。
自分がこんなに速く自転車を漕げるなんて、今まで知らなかった。
この光景は、車の中で様子を見ていた若者も驚かせた。
彼は完全に呆然としていた。
「マ、マジかよ!」
こんなことも可能なのか?!
ナンパってこんなに簡単?
しかもこんな美人な子相手に。
実際に見なければ、誰が信じるだろうか?
勉強になった、勉強になった!
実践は真理を生むというが。
ちょうどそのとき、横を若い女性が歩いてきた。
若者は咳払いをして、「お嬢さん、乗っていきませんか?」
若い女性は彼を一瞥して、「送ってくれるの?」
「うん。」若者は頷いた。
若い女性は近づいてきて、「3号線の駅の近くまで行きたいんだけど、いくら?」
若者は先ほど見た光景を真似て、「料金はいりません。キスしてくれたら、無料で送ります。」
若い女性は笑いながら、「本当?」
まさかこの手が効くなんて!
若者は興奮して、すぐに頷いた、「もちろん!」
若い女性はバッグを持って彼の側に来て、若者が反応する間もなく、両手でバッグを持ち上げ、彼の頭を強く叩いた、「この変態!」
若者は殴られて呆然としていた。
目の前で星が飛び、泣きそうになった。
展開が想像していたのと違う!?
**
30分も経たないうちに、如月廷真は蒼井華和をマンションの入り口まで送り届けた。
疲れたのか暑さのせいか。
今、彼の心臓はいつも以上に激しく鼓動していた。
ドクドク。
一拍また一拍。
蒼井華和は後部座席から降りて、軽やかに、「うちでお茶でも飲んでいく?」
「も、もう遅いから、帰、帰ります。」
言葉を発した瞬間、如月廷真は自分でも呆れた。
どうして吃ってしまったんだ。
男らしくない!
蒼井華和は軽く微笑んで、「わかった、気をつけて帰ってね。」
「うん。」
「おやすみ。」蒼井華和は彼に手を振った。
「おやすみ。」
帰り道も自転車は相変わらず速かった。
如月廷真の心は今、とても興奮していた。
心臓が胸から飛び出しそうだった。
彼は如月家の別荘には戻らなかった。
代わりにあるマンションに向かった。
3LDK。
グレーブラックの内装で、彼自身のように、神秘的でクールな雰囲気だった。