「華和、話題を変えましょう」朝比奈瑠璃はこの話題を続けたくなかった。
雰囲気が段々と固くなってきたのを見て、橘忻乃は笑顔で言った。「楽しい話をしましょう。司緒、実は華和の目的はただ一つ、あなたが騙されないように、そして傷つかないようにと願っているだけなの。私たちはそれぞれ違う視点から物事を見ているから、見える問題も違うのよ」
結城詩瑶は頷いて言った。「そうよ司緒、私たちは皆良い友達だから、華和だけじゃなく、私と忻乃もあなたが騙されないことを願っているの」
朝比奈瑠璃はため息をついた。「華和、忻乃、詩瑶、私は皆さんの好意はわかっています。でも私は自分の両親のことをよく知っています。彼らがどんな人か分かっているし、私は成人して、是非を判断する能力があります」
この言葉は、蒼井華和が余計な口出しをしているという暗示だった。
橘忻乃は眉をひそめ、朝比奈瑠璃が少し恩を仇で返しているように感じた。
朝比奈瑠璃はこの話題を続けたくなく、「こちらの電波が悪いので、切らせてもらいます」と言った。
「さようなら」
そう言って、彼女はビデオ通話を切った。
通話を切ってすぐ振り返ると、黒川振一が横でじっと彼女を見つめているのが目に入った。
背筋が凍るような感覚だった。
「何を見ているの?」朝比奈瑠璃は尋ねた。
黒川振一は笑いながら言った。「五美、君は本当に綺麗だね」
彼は黒川家の先祖の墓がきっと青い煙を立てているに違いないと思った。そうでなければ、この人生でこんなに綺麗な嫁を娶れるはずがない!
朝比奈瑠璃はますます背筋が凍る思いがした。「あ、あなた、そんな風に見ないで」
黒川振一はようやく視線を外した。「ごめんね五美、僕はただ君みたいな綺麗な人を見たことがなかったから!」
朝比奈瑠璃は無理に笑って、「ありがとう」と言った。
四人グループのビデオチャットはまだ続いていた。
朝比奈瑠璃が突然チャットから退出したことで、橘忻乃は少し怒りを感じた。「司緒はどうしたの?実家に帰ってから随分と気が強くなったみたい。蒼井美人、気にしないで。彼女は最近何か嫌なことがあったのかもしれないわ」
まるで善意を理解できない人のような印象だった。
結局、蒼井華和の忠告も善意からだったのに。
蒼井華和は表情を変えず、無表情で「大丈夫」と言った。