172:後悔先に立たず、蒼井華和の番号しか覚えていない(2番目の更新)

どんなにドアをノックしても、誰も開けに来なかった。

「助けて!」

「お父さん!お母さん!」

ドアをノックしても返事がなく、仕方なく朝比奈瑠璃は寝室の椅子を持ち上げ、力いっぱいドアに叩きつけた。

しかし、ドアはびくともしなかった。

「お父さん!お母さん!早く来て!」

ここまで事態が進んでも、瑠璃は両親が自分を騙しているとは信じられなかった。

もしかしたら、これは両親とは関係ないのかもしれない。

誘拐されてここに連れて来られたのだ。

そう。

きっとそうに違いない。

そう思った瑠璃は、何かを思い出したように、すぐにポケットに手を入れて携帯電話を探した。

警察に通報しなければ。

すぐにここから出なければ。

見下ろすと、秀禾衣裝にはポケットがないことに気づいた。

携帯電話はどこ?