どんなにドアをノックしても、誰も開けに来なかった。
「助けて!」
「お父さん!お母さん!」
ドアをノックしても返事がなく、仕方なく朝比奈瑠璃は寝室の椅子を持ち上げ、力いっぱいドアに叩きつけた。
しかし、ドアはびくともしなかった。
「お父さん!お母さん!早く来て!」
ここまで事態が進んでも、瑠璃は両親が自分を騙しているとは信じられなかった。
もしかしたら、これは両親とは関係ないのかもしれない。
誘拐されてここに連れて来られたのだ。
そう。
きっとそうに違いない。
そう思った瑠璃は、何かを思い出したように、すぐにポケットに手を入れて携帯電話を探した。
警察に通報しなければ。
すぐにここから出なければ。
見下ろすと、秀禾衣裝にはポケットがないことに気づいた。
携帯電話はどこ?