......
一方。
蒼井華和はベランダで植物に水をやっていた。
その時、空気の中でノックの音が聞こえた。
彼女はドアを開けに行った。
男性が玄関に立っていて、身長が193センチメートルに近いため、入る時に少し腰を曲げなければならなかった。
「良くなった?」と彼は尋ねた。
蒼井華和は、もちろん彼が一昨日の酔っ払いのことを聞いているのを知っていた。
「だいぶ良くなりました」蒼井華和は少し恥ずかしそうに答えた。
如月廷真は手に持っていた野菜と魚をキッチンに持って行き、「まだ夕食食べてないでしょう?僕が作るよ」と言った。
彼は自然に壁に掛かっているエプロンを取り、身につけた。
ピンク色のキティちゃん。
とても可愛らしく見えた。
「お手伝いします」蒼井華和は袖をまくり上げた。
そう言って、近づいて袋の中の魚を取り出した。
魚の鮮度を保つため、まだ捌いていなかった。
蒼井華和は自分の手先の器用さには自信があったので、魚を捌くくらい問題ないはずだと思った。
しかし、蒼井華和が魚に手を伸ばす前に、如月廷真に'お引き取り願って'キッチンから追い出された。「お嬢様、邪魔をしないでください」
蒼井華和は呆れた。
「どうしてみんな同じことを言うの?」
確かに料理の腕は良くないけど、邪魔になるほどではないでしょう?
「他に誰が言ったの?」如月廷真は眉をひそめた。
瞳に警戒の色が浮かんだ。
「橘忻乃と詩瑶よ」蒼井華和は答えた。
如月廷真は軽く笑って、「彼女たちの言う通りだね」
蒼井華和:「......」
鹤の恩返しが手伝わせてくれないので、蒼井華和はドア枠に寄りかかって、彼の作業を見ているしかなかった。
男性は白いシャツを着て、袖を肘まで捲り上げ、筋肉の付き方がはっきりとした腕を見せていた。
力強い。
胸に付けているエプロンは、違和感どころか、むしろ支配者の雰囲気を醸し出していた。
キッチンにいても、やはり人々を圧倒する存在感だった。
確かにあの言葉の通りだ。
イケメンは何をしても様になる。
鹤の恩返しは明らかにこういった作業に慣れていて、魚を捌くのも流れるように上手かった。
そして野菜を洗って炒める。
実は、如月廷真は以前料理ができず、目玉焼きすら作れなかった。