一度に三キロのドッグフードを食べられる。
栄養を補給するため、蒼井華和は毎回羊乳パウダー、生卵三個、カルシウムサプリメントとミネラルを加えていた。
この犬は以前空腹に怯えていたのだろう。蒼井華和が器を置くと、すぐに大きな口で食べ始めた。
三キロのドッグフードは、数口で全て平らげてしまった。
食べ終わると、また哀れっぽく蒼井華和を見つめ、まだ満腹ではないような様子だった。
蒼井華和が反応しないのを見て、犬は前足を伸ばして器を叩いた。
その賢さに、蒼井華和は思わず手を伸ばして犬の頭を撫でた。「いい子、食べ過ぎは体に良くないわ」
モチ子は大きな頭で蒼井華和の手に擦り寄せた。
そのとき、如月廷真が食器を洗い終えてキッチンから出てきて、床にいる大きな黒犬を見て、興味深そうに尋ねた。「引き取るつもり?」
「うん」蒼井華和は軽く頷いた。「連れて帰ってきた以上、責任を持たないと」
「名前は決めた?」如月廷真は続けて尋ねた。
「決めたわ」
「まだ言わないで、私が当ててみるから」言い終わると、如月廷真は続けた。「モチ子?」
「そう」蒼井華和は目を細めて笑った。「どうして分かったの?」
「モチ子とまんたん、簡単に推測できたよ」
実は彼は、心が通じ合っているのかもしれないと言いたかった。
でも言えなかった。
蒼井華和に軽薄だと思われたらどうしよう?
二人はしばらく話をして、如月廷真は帰ると言い出した。
蒼井華和は立ち上がって彼と一緒に、「送るわ、ついでにモチ子を海辺に散歩に連れて行くの」
「いいね」如月廷真は軽く頷いた。
七時半の海辺は人が多く、特に手を繋いでいるカップルが目立った。
二人はそうして砂浜を歩き、如月廷真がモチ子を引いていた。
月明かりが二人と一匹の影を長く引き伸ばしていた。
あまりにも際立つ容姿のせいか、通りがかる旅行客は皆、二人の方を振り返って見つめていた。
......
翌日。
蒼井華和は中古家電街に行った。
遠くから、高城大樹は蒼井華和を見つけると、興奮して手を振った。「師匠!」
蒼井華和は歩み寄った。
蒼井華和を見て、朝倉俊真は不真面目な表情を引き締めた。「大神が来られた」
蒼井華和はタロボール様ではないが、コンピューター関連の才能は間違いなく人並み以上だった。
時が経てば。