194:犬の糞を踏んで幸運(7更)

静寂が破られた。

みんなが振り向いて彼女を見た。

周防紫月は緊張した様子で「華和兄、大丈夫?」と尋ねた。

蒼井華和の額に細かい汗が浮かんでいた。

まだ動揺が収まらない。

しばらくして、やっと我に返り、周防紫月の方を振り向いて「大丈夫、悪夢を見ただけ」と答えた。

「よかった」

白川さんは客室乗務員の方を見て「お湯をお願いします」と言った。

「かしこまりました」と客室乗務員は頷いた。

すぐにお湯を持ってきて「お客様、お湯でございます」

「蒼井さんに」

「はい」

客室乗務員は蒼井華和の前にお湯を差し出し「お湯でございます」

「ありがとうございます」

蒼井華和はカップを受け取り、一口飲んだ。

熱いお湯が喉を通り、悪夢がもたらした圧迫感が少し和らいだ。

さっきの夢は、あまりにも生々しかった。