静寂が破られた。
みんなが振り向いて彼女を見た。
周防紫月は緊張した様子で「華和兄、大丈夫?」と尋ねた。
蒼井華和の額に細かい汗が浮かんでいた。
まだ動揺が収まらない。
しばらくして、やっと我に返り、周防紫月の方を振り向いて「大丈夫、悪夢を見ただけ」と答えた。
「よかった」
白川さんは客室乗務員の方を見て「お湯をお願いします」と言った。
「かしこまりました」と客室乗務員は頷いた。
すぐにお湯を持ってきて「お客様、お湯でございます」
「蒼井さんに」
「はい」
客室乗務員は蒼井華和の前にお湯を差し出し「お湯でございます」
「ありがとうございます」
蒼井華和はカップを受け取り、一口飲んだ。
熱いお湯が喉を通り、悪夢がもたらした圧迫感が少し和らいだ。
さっきの夢は、あまりにも生々しかった。