蒼井紫苑は蒼井遥真にお茶を注いだ。
茶色は澄んでいた。
蒼井紫苑のお茶を淹れる腕前が良いことが分かる。
蒼井遥真は湯飲みを手に取り、一口飲んだ。
普段なら、きっと丁寧に味わっていただろう。
しかし今日は。
何を食べても。
すべてが蝋を噛むようだった。
蒼井遥真は湯飲みの中のお茶を一気に飲み干した。
蒼井紫苑は蒼井遥真を見上げて、「お兄さん、何か悩み事?」
「うん」と蒼井遥真は続けて言った。「一つ聞きたいことがある」
「どうぞ」と蒼井紫苑は答えた。
蒼井遥真は尋ねた。「君と若松冬音の仲はどうなの?」
その言葉を聞いて、蒼井紫苑の目に一瞬光が宿った。お茶を淹れ続けながら、「前は仲が良かったけど、彼女のことを聞いてからは、少し距離を置くようになったわ。私は、いい子はワンナイトスタンドなんかするべきじゃないと思うの」