202:家から追い出され、絶縁_6

「若松琴璃。」

そのとき、院長が外から入ってきた。

声を聞いて、若松琴璃は笑顔で顔を上げた。「院長先生。」

院長は書類を手に持っていた。きっと自分の昇進の件について話すためだろう。

もうすぐ若松冬音が蒼井遥真と結婚し、自分も昇進する。若松琴璃は本当に興奮していた。

院長は若松琴璃の側に来て、「君は解雇だ。」

たった五文字だった。

若松琴璃は目を見開き、幻聴かと思った。「院長先生、冗談はやめてください。」

科の他のスタッフも皆呆然としていた。

若松琴璃が昇進するはずじゃなかったのか?

なぜ突然解雇されるんだ!

一瞬にして、全員が若松琴璃と院長の方を向いた。

院長の表情は真剣だった。「誰も冗談を言っているわけではない。」

「これが解雇通知書だ。」そう言って、院長は解雇通知書を若松琴璃の机の上に投げた。

解雇通知書?!

若松琴璃はすぐに書類を手に取り、院長を見上げた。「院長先生、解雇には理由があるはずです!そうでなければ、病院は何の権利があって私を解雇するんですか?」

院長は眉をしかめた。「自分が何をしたか分からないのか?」

「私が何をしたというんです?」

若松琴璃は若松冬音のために偽の証明書を作った件をすっかり忘れていた。今の彼女には、自分が一体どんな過ちを犯したのか思い出せなかった!

院長は続けた。「君が職権を乱用して甥の若松冬音に偽の中絶証明書を発行した件、我々の病院が知らないと思っていたのか?」

その言葉を聞いて。

若松琴璃は完全に固まってしまった!

病院はどうやってこの件を知ったのか?

この件は彼女と若松冬音しか知らないはずなのに?

「若松琴璃、人に知られたくないなら、そもそもするべきではなかったんだ。」そう言って、院長は若松琴璃の隣に座っているショートヘアの医師を見た。「藤村先生。」

藤村先生は院長を見た。「はい、院長先生。」

院長は続けた。「今日から、君が若松琴璃の位置を引き継ぐことになる。」

「ありがとうございます!」藤村先生はすぐに立ち上がって感謝の言葉を述べた。

本当に良かった!

藤村先生は若松琴璃が一から育てた弟子だったが、まさか師匠の位置にこんなに早く就けるとは夢にも思わなかった。

若松琴璃はその場に立ったまま、背筋が寒くなり、全身の力が一瞬で抜けていくようだった。