しかし、榊原満山と比べると、高城ママには殺人の動機がなかった。
そのため、警察は彼女を一時的に釈放せざるを得なかった。
警察署を出て、高城ママは深いため息をついた。
すべては彼女の掌握の中にあった。
榊原詩々を誤って殺してしまったことを、彼女は後悔していなかった。
少なくとも。
蒼井紫苑の心配の種を一つ取り除いたのだから。
もし榊原満山が生きていたら。
必ず蒼井紫苑に問題をもたらすはずだった。
蒼井紫苑は今や何不自由ない御令嬢なのだ。
一方、榊原満山のようなクズは、目的を達成するためなら手段を選ばない。
彼女の人生は既に榊原満山によって台無しにされていた。
でも娘はそうはさせない。
心の中では爽快だったが、高城ママはそれでも悲しそうな表情を装った。
高城ママはパトカーで旧市街まで送られた。
高城ママが戻ってきたことを知り、住民たちは皆慰めに来た。
「詩々母さん、詩々はもういないけど、しっかり節制してください!」
高城ママは泣き崩れた。
両目は腫れ上がり、喉もかれていた。
地元のテレビ局がこの事件を知り、すぐに記者を派遣して取材に来た。
「視聴者の皆様こんにちは、NHK総合の記者、久世雨乃です。現在旧市街に到着しました。ここが詩々ちゃんが暮らしていた場所です。」
「この先が詩々ちゃんの家です。」
久世雨乃はすぐに住民の一人を捕まえて、インタビューを始めた。「おじさん、お聞きしたいのですが、旧市街の住民の方ですか?」
「はい、そうです。」おじさんは頷いた。
久世雨乃は続けて尋ねた。「では、詩々ちゃんをご存知でしたか?」
「知っていましたよ」おじさんは目を赤くして言った。「詩々は本当に可愛い女の子でした。住民みんなが彼女を好きでした。でも残念なことに、この子が...榊原満山は人間じゃない!きっと彼が詩々を殴り殺したんだ...」
別の住民が割り込んできた。「記者さん、言わせてください!詩々ちゃんのことをしっかり報道してください。榊原満山のクズに代償を払わせなければ!」
「死刑にすべきだ!」
「この男は最低だ。妻を殴るだけでなく、子供まで殴るなんて...」
次々と住民たちがカメラの前に押し寄せ、皆が詩々のために正義を訴えた。
記者は賃貸アパートにも訪れた。