しかし、電話の向こうから電源が切れている状態が伝わってきた。
電源が切れている?
榊原詩々は電話の電源を切ることはめったにないはずなのに。
蒼井華和は眉をひそめた。
心の中で突然、不吉な予感が湧き上がった。
そのとき。
一台のパトカーが路肩に現れた。
二人の警官が小走りで近づいてきた。
「蒼井華和さんでしょうか?」
「はい」蒼井華和は軽く頷いた。
二人の警官は警察手帳を見せ、続けて言った。「蒼井さん、実はある殺人事件の被害者とあなたに関連があるようです。署まで同行して調査にご協力いただけますでしょうか?」
「はい」蒼井華和は続けて尋ねた。「誰なのか、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「榊原詩々さんです」警官は答えた。
蒼井華和の顔が一瞬で真っ青になった。
足取りさえも不安定になった。