悪毒な狼め!
なるほど。
なるほど、蒼井紫苑が蒼井華和を探し続けても、何の結果も得られなかったわけだ。
そうか。
そうか、彼女は最初から蒼井華和を見つける気などなかったのだ。
蒼井華和がこの世から消えてしまえばいいと願う人間が、本気で探すはずがない。
「この悪毒な女!」今の篠崎澪は、蒼井紫苑を殺してしまいたいほどだった。
憎しみの他に、後悔があった。
篠崎澪は自分で直接探さなかったことを後悔していた。なぜ人探しを蒼井紫苑に任せてしまったのか!
さらに、あの時もっと用心深くすべきだった、白眼狼を家に連れて帰ってしまったことを後悔していた。
「お母さん、お母さん!私もどうしてこうなったのか分からなくて......」今の蒼井紫苑は、はっきりと分かっていた。今の彼女にできることは、全てを否定し、自分を被害者として描くことだけだった。これら全ては高城桂子がしたことで、自分とは何の関係もない、自分は無実だと。
「私は知りません、何も知りません.......本当に何も知らないんです......」
蒼井紫苑は涙でぐしゃぐしゃの顔で。
床に跪いて蒼井家の者の許しを請うた。
「お父さん、お母さん、私は一度も姉さんを害そうと思ったことはありません、誓います!姉さんが見つかる前は、誰よりも姉さんを見つけたいと思っていました!それに、私は高城ママが実の母だということも全然知りませんでした!彼女とは何の関係もありません、私の母はお母さんだけです、私を育ててくれたのはお父さんとお母さんです。これからも、お父さんとお母さんだけを大切にします、他の人なんて認めません!」ここまで言って、蒼井紫苑は篠崎澪の足にしがみついた。「お母さん、私を育ててくれたように、今度は私がお母さんの面倒を見ます!私を見捨てないで!お願いです、私を見捨てないで!」
蒼井紫苑は声を上げて泣いた。
どうしても、蒼井家の人々に追い出されるわけにはいかなかった。
蒼井紫苑は世渡り上手な人間で、自分が今持っている全ては'蒼井家次女'という肩書きのおかげだと分かっていた。
一度蒼井家次女という肩書きを失えば、彼女は何も持っていないも同然になる。
「お父さん、お母さん、私を信じてください.......」
篠崎澪は一つ一つ蒼井紫苑の手を外した。「出て行きなさい。もうあなたは私の娘ではありません。」