そう思うと、篠崎澪は手で口を強く押さえた。
以前は、高城ママが子供好きで、自分の子供を失ったから、こっそりと蒼井紫苑に近づいていたのだと思っていた。
今になって。
事態は自分が想像していたようなものではなかった。
篠崎澪は涙を流し、蒼井修誠に寄りかかっていなければ、とっくに気を失っていただろう。
母親のこの様子を見て、蒼井陽翔は非常に焦った。
いけない。
両親をこのまま蒼井琥翔に騙されるわけにはいかない。
これは全て蒼井華和と蒼井琥翔が仕組んだことに違いない。
蒼井陽翔は元々、蒼井華和が蒼井紫苑を快く思っていないだけだと思っていたが、蒼井華和の心がここまで邪悪だとは思わなかった。
蒼井紫苑を完全に蒼井家から追い出すために、こんなことまでするなんて。
「お父さん、お母さん!兄さんの戯言を信じないで!事実はそうじゃないんです!」蒼井陽翔は焦って、蒼井琥翔を見つめた。「兄さん、どうしてこんな風になってしまったんですか?正義の心はもうないんですか?紫苑も兄さんの妹じゃないですか!」