蒼井紫苑は深いため息をつき、榊原満山を見つめた。
彼女は知っていた。榊原満山のような人間のクズは、底なしの欲望を持つ貪欲な人間だということを。
もし今回、本当に十万円を渡してしまえば、際限なく要求してくるだろう。
だから。
妥協するわけにはいかない。
お金を渡すわけにもいかない。
蒼井紫苑は続けて言った。「とにかく私にはお金がないわ。ついて来たいなら、ついて来なさい。」
そう言うと、蒼井紫苑は背を向けて歩き出した。
彼女は信じていた。榊原満山が本当に彼女についてくるはずがないと。
蒼井紫苑は、榊原満山がお金を得られないと分かれば、すぐに立ち去るだろうと思っていた。しかし、榊原満山は彼女の後ろについてマンションの中まで入ってきた。
そしてエレベーターにも一緒に乗り込んできた。