206:次々と契約解除、損失は10億を超える!_5

約三十分後、白髪の明川監督が笑顔で近づいてきた。「陽翔くん、待たせてしまったね!」

「大丈夫です」蒼井陽翔はカップを置き、椅子から立ち上がった。

明川監督は髪こそ真っ白だが、年齢はそれほど高くなく、四十代前半で、笑うと非常に親しみやすい雰囲気を醸し出す大和国でも数少ない評判の良い監督の一人だった。

明川監督は続けて言った。「申し訳ない、陽翔くん。わざわざ来てもらって」

そう言うと、明川監督は横にいる秘書を見て、叱るように言った。「キャリー!陽翔くんに連絡するように言っただろう?」

キャリーは頭を下げ、焦って言葉を詰まらせながら「か、監督...忘れてしまいました!」

「早く蒼井トップスターに謝りなさい」明川監督は眉をひそめ、厳しい口調で言った。

キャリーは蒼井陽翔の方を向いて、「蒼井トップスター、本当に申し訳ありません。故意ではありませんでした」

蒼井陽翔は首を傾げた。一体なぜ明川監督がキャリーに謝らせるのだろうか?

横にいた若いアシスタントも困惑した表情を浮かべていた。

そのとき、明川監督は笑いながら蒼井陽翔の肩を叩き、「陽翔くん、実はね、昨日の夜キャリーに連絡させようと思っていたんだ。今日は来なくていいって。君はもう業界でトップスターになったんだから、若い人たちにもチャンスを与えないとね。そうでないと、新人たちはいつ日の目を見られるんだろう?」

蒼井陽翔は眉をひそめた。「監督、つまり『清月』の主演を変えるということですか?」

明川監督は頷いた。「実は、我々は新人俳優にもチャンスを与えたいと考えているんだ」

蒼井陽翔の心の中で怒りが燃え上がった。

明川監督の言葉は表向きの理由に過ぎず、実際は出演料を抑えたいだけなのに、適当な口実が見つからないから、キャスティングを変更すると言い出したのだ。

これは何なのか?

落ちぶれた者を踏みつけるというのか?

蒼井陽翔は明川監督の思い通りにはさせない、一歩も引かないつもりだった。笑顔を浮かべながら「監督の仰る通りです。確かに新人俳優にもっとチャンスを与えるべきですね。それでは、お邪魔しました」

言い終わると、彼は背を向けて歩き出した。

若いアシスタントはすぐに蒼井陽翔の後を追った。

明川監督は蒼井陽翔の背中を見つめ、目を細めた。しばらくして、首を振りながら溜息をつき「若者は血気盛んだな」