蒼井紫苑はカードを蒼井陽翔に返し、「お兄さん、そんなことをするなら、私はあなたの家に引っ越すのを辞めます」と言った。
これを聞いて、蒼井陽翔は仕方なく、カードを取り戻し、笑いながら「紫苑、お兄さんと約束してくれるの?」と言った。
「うん」蒼井紫苑は頷いて、「今から荷物をまとめます」と答えた。
実際、蒼井陽翔の家に引っ越すのが一番安全だった。
蒼井陽翔は高級マンションに住んでおり、出入りが厳重で、誰でも簡単に入れるわけではなかった。
しばらくして。
蒼井紫苑は服をまとめ、蒼井陽翔の車に乗った。
車の中で。
蒼井陽翔は紫苑に今後の計画を話した。「まず明川監督の映画を引き受けて、その出演料で事務所を設立するつもりだ」
明川監督の出演料は1億円だった。
撮影は来年の予定だが、以前明川監督と一本の映画で共演したことがあるので、出演料を先に支払ってもらえるよう相談できるはずだった。
蒼井紫苑は頷いて、「お兄さん、明川監督と話はついているの?」と聞いた。
「うん」
ここまで考えると、蒼井陽翔は非常に気分が良かった。
華姉は以前、明川監督が主演を変更するのではないかと心配していたが、明川監督は昨日もスケジュールについて相談してきたばかりだった。
蒼井陽翔が根拠のない自信を持っているわけではなかった。
彼は業界で確かな地位を築いていたのだ。
明川監督が映画の興行収入を考慮する限り、基盤のない新人を起用することはないだろう。
最も重要なのは、蒼井陽翔が事前にプロモーションを行っており、ほとんどの人が彼が明川監督の新作の主演であることを知っていて、反響も良く、みんながこの仙侠映画を楽しみにしていることだった。専門の評論家までもが、彼以外に芸能界で主役にふさわしいスターはいないと評していた。
もし明川監督がこの時点でキャストを変更すれば、必ず興行収入に影響が出るだろう。
考えるまでもなく、明川監督は絶対にキャストを変更しないはずだ!
だから。
華姉との契約解除は自分のキャリアを台無しにすることではなく、頂点への登りはじめなのだ!
「おめでとう、お兄さん」蒼井紫苑は蒼井陽翔を見た。
蒼井陽翔は満面の笑みを浮かべた。
すぐに車は蒼井陽翔の住む高級マンションに到着した。