206：次々と契約解除、損失は10億を超える！_6

蒼井陽翔が今一番必要としているのは慰めだった。蒼井紫苑の方を振り向いて、「紫苑、ありがとう」と言った。

この時の蒼井陽翔は、紫苑のような妹がいることを心から感謝していた。

もし今日、彼の側にいたのが蒼井華和だったら、きっと他の人たちと同じように、彼から離れていっただろう。

明川監督との契約は上手くいかなかったものの、蒼井陽翔は自分の事務所と広報チームを設立する必要があった。

彼の芸能活動はまだ続けなければならない。

しかし蒼井陽翔の手元にある運転資金はほとんど残っていなかった。

結局のところ、巨額の違約金を支払ったばかりだった。

やむを得ず、蒼井陽翔は家を売ることを考えた。

彼は帝都に複数の不動産を所有していたからだ。

現在の帝都の平均的な不動産価格は一平方メートルあたり10万元で、しかも蒼井陽翔の物件は全て一等地にあった。もし3軒の家を売れば、約8000万元の現金を手に入れることができ、手持ちの資金と合わせれば、初期投資を賄うことができるはずだった。

蒼井陽翔は行動派だった。

誰にも笑われたくなかったので、すぐに不動産会社に連絡を取った。しかし急いで資金が必要だったため、本来8000万元の価値がある3軒の不動産は、6000万元でしか売れなかった。

......

一方。

Y市。

橘艶子は実家で両親と数日過ごした。

両親はすでに70歳を過ぎ、髪は白くなっていた。母親は娘を見て言った。「艶子、昨日村の高城お縁婆さんが来てね、お見合いの話を持ってきたの。村の東の橘家の方なんだけど、どう...」

橘艶子は笑って答えた。「お母さん、私のことは私が分かってるから、心配しないで。お父さんとお母さんは今、楽しく老後を過ごすことが一番大事なの」

母親はため息をつき、「でもあなたはいつまでも家庭を持たないし、母親として心配にならないわけがないでしょう」

橘艶子は続けて言った。「実は今回帰ってきたのは、お父さんとお母さんに話があるの。私、外国人の彼氏ができたの。ジャックっていうの。これからは彼と一緒に外国で暮らすことになるかもしれない。次に帰ってこれるのがいつになるか分からないけど、お父さんとお母さん、それに兄夫婦と仲良く暮らしてね」

「外国人？」橘母は目を細めた。

橘艶子は笑いながら頷いた。