榊原満山は血だまりの中に倒れ、目を大きく見開いたまま、蒼井陽翔を見つめていた。
不気味極まりない。
まるで命を奪いに来た怨霊のように。
その瞬間。
蒼井陽翔の呼吸が荒くなり、背筋が凍り、恐怖が全身を駆け巡った。
「あっ!」
蒼井陽翔は叫び声を上げ、そのまま地面に倒れ込み、荒い息を吐きながら、胸が激しく上下し、恐怖で目を固く閉じた。
蒼井陽翔が以前ただの俳優だったということは置いておいて。
この光景は、生死を見慣れた医者でさえ、おそらく度肝を抜かれるだろう。
幻覚だ。
きっと幻覚に違いない。
蒼井陽翔は必死に冷静さを取り戻そうとし、再び目を開けて息を飲み、もう一度床を見たが、目の前の光景は何も変わっていなかった。
まだ恐怖は残っていたものの、蒼井陽翔はかなり落ち着きを取り戻していた。
榊原満山がまだ目を開いているのを見て、蒼井陽翔は彼がまだ死んでいないのではないかと思い、手を伸ばして榊原満山を揺さぶった。「おい、目を覚ませ。」
血だまりの中に横たわる榊原満山からは何の反応もなかった。
蒼井陽翔は喉を鳴らし、額から冷や汗が一滴床に落ちた。彼は震える右手を伸ばし、榊原満山の鼻の前で確かめた。
そして素早く手を引っ込めた。
死んでいる。
榊原満山は本当に死んでいた。
これは一体どういうことだ?
一瞬にして、蒼井陽翔の心臓は再び制御不能になった。
彼は榊原満山を憎んでいたし、蒼井紫苑がこの厄介者から早く解放されることを願っていたが、今、榊原満山が本当に目の前で死んでいる状況に直面して、蒼井陽翔は極度の恐怖に陥った。
どうすればいい!
今どうすればいいんだ?
極度の恐怖で蒼井陽翔の頭は真っ白になった。
そのとき、蒼井陽翔は通報することを思いついた。
そうだ。
早く警察に通報しなければ。
そう思い至り、蒼井陽翔はすぐに携帯電話を探しに行った。携帯は慌てた際に包丁の近くに落ちていた。幸い電気はまだついていた。
蒼井陽翔は携帯電話を手に取ったが、この時、画面は血で覆われていた。蒼井陽翔はそんなことは気にせず、服で携帯を拭うと、震える手で110番を押した。
しかし、ダイヤル途中で、蒼井陽翔は何かを思い出したかのように、動作を止めた。
今電話をかけたら、もし殺人犯と間違われたらどうしよう?
だめだ。