219：現実を知り、蒼井陽翔崩壊！_2

早坂警部は長年捜査に携わり、多くの刑事事件を扱ってきた。

現時点では、この殺人事件は一見単純に見えるが、実は疑問点が山積みだ。

「証拠はあるのか？」早坂警部が尋ねた。

蒼井陽翔は黙っていた。

彼には何が証拠になるのか分からなかった。

彼の潔白を証明できる唯一の人物は蒼井紫苑だった。

しかし、もし蒼井紫苑が本当に犯人だとしたら、彼は黄河で身を洗っても潔白を証明できないだろう。

蒼井陽翔は今、恐怖と悲しみの両方を感じていた。

二つの複雑な感情が絡み合っていた。

死刑判決を受けることへの恐怖。

蒼井紫苑にこんなことをされた悲しみ。

彼はずっと蒼井紫苑を実の妹のように思っていた。

しかし今日。

蒼井紫苑は彼にこんなことをした。

これは蒼井陽翔を生きたまま八つ裂きにするよりも辛かった。

窒息しそうだった。

早坂警部は蒼井陽翔の表情の細かな変化を見逃さなかった。「もし自分の潔白を証明する証拠がないのなら、我々の仕事に協力してもらおう。質問に正直に答えてくれればいい。」

「はい。」蒼井陽翔は頷いた。「必ず協力します。」

早坂警部は両手を組んで、蒼井陽翔の目をまっすぐ見つめた。「では、もう一度聞くが、現場に到着した後、凶器の包丁に触れたか？」

「いいえ。」蒼井陽翔は首を振り、現場に到着してからの出来事を再び説明した。

その時、蒼井陽翔は何かを思い出したかのように続けた。「早坂警部、私を信じていただけないなら、監視カメラを確認してください。監視カメラなら必ず私の潔白を証明できるはずです！」

団地内も、蒼井紫苑の家のリビングにも、監視カメラの映像があるはずだった。

早坂警部は言った。「監視カメラの映像があれば、ここであなたに質問する必要はないんだがな。」

武陵区全体が停電していたため、監視カメラも当然機能していなかった。

言い終わると、早坂警部は蒼井陽翔を見つめた。「最後にもう一度聞く。本当にその包丁に触れていないのか！この質問は重要だ。よく考えて答えてくれ。」

一言一句、力強く響いた。

蒼井陽翔は早坂警部を見上げた。「確かです。触れていません。」

蒼井陽翔の答えを聞いて、早坂警部の表情が変わり、声も厳しくなった。机を叩きながら、「では、なぜ包丁からあなたの指紋が検出されたのか？」

「何ですって？指紋？」