第15章 これは彼女が産んだ赤ちゃんよ

小さな赤ちゃんは、母親の体内で十分な栄養を得ていたため、生まれた時には4.3キロもあり、真っ黒で輝く大きな瞳を好奇心いっぱいに見開いていた。

結城お爺さんは手放したくないほど可愛がり、来客たちは熱心に祝福の言葉を述べた。

しばらくすると、小さな坊やは結城お爺さんの腕の中で落ち着かなくなり、乳母に引き渡され、お爺さんの許可を得て林明里の前に抱かれた。

林明里は興奮したように赤ちゃんを受け取ったが、その小さな命が林明里に近づいた瞬間、突然大声で泣き出し、その声の大きさに皆が振り向いた。

まだ赤ちゃんを抱いている林明里は、この肉の塊を地面に叩きつけたいほど憎らしく思ったが、周りの視線を感じ、ぎこちない笑顔を浮かべながら、不自然な姿勢で赤ちゃんを抱き続けた。

夏川清美は泣きで顔を真っ赤にした小さな命を見つめ、胸が締め付けられる思いだった。何か言おうとした時、背後から澄んだ心地よい男性の声が聞こえた。「藤堂さん、お願いします」

「はい」乳母は急いで林明里から赤ちゃんを受け取り、優しく揺らしながらあやしたが、小さな命は何かがあったのか、全く落ち着かず、むしろ泣き声は大きくなり、呼吸も乱れ始めた。

夏川清美は心配で仕方なかったが、鈴木末子に強く引き止められ、低い声で脅された。「やめなさい」

結城陽祐は夏川清美の方をちらりと見て、乳母に指示した。「上の階に連れて行って」

藤堂さんは躊躇する暇もなく、皆の視線を感じながら赤ちゃんを抱いて階段を上がった。

夏川清美は反対に鈴木末子のツボを押さえ、その制止を振り切って結城陽祐の方を見た。「私は医学を学んでいますが、一緒に上がって赤ちゃんを診させていただけませんか？」

林明里と鈴木末子は目を見開き、不安と同時に軽蔑の念を抱いた。結城家がどんな家柄で、結城様がどんな身分なのか、夏川清美のようなデブが医学を学んでいるからといって、赤ちゃんを診ることを許可されるはずがない。

まったくの妄想だ！

特に夏川清美が言い終わった後、周りの多くの人々が彼らに探るような視線を向けた。林明里は目に嘲りを浮かべた。彼女は赤ちゃんの'実の母親'として今日の誕生日に結城家から紹介されることもなく、赤ちゃんに触れることさえ結城お爺さんの黙認が必要なのに、このデブ野郎に何の資格があるというのか？

そのとき、人脈作りから戻ってきた林富岡は、夏川清美の言葉を聞いて低い声で叱りつけた。「馬鹿なことを、誰がここに来いと言った！」

明らかに面目を失った態度だった。

夏川清美は鈴木の母娘の嘲笑と、周りの人々の軽蔑的な眼差しを感じ、父の言葉でそれは頂点に達したが、彼女は落ち着いた様子で、太った体を動かさずに結城陽祐の返事を待った。

結城陽祐は振り向こうとする動きを止め、今日誠愛病院で聞いた話を思い出した。もし林夏美が病院の外での迅速かつ的確な救急処置をしていなければ、あの患者は救えなかったかもしれない。そして周りの人々の夏川清美に向けられた視線を感じながら、太った少女の澄んだ瞳と微かに上がった唇を見て、「健二、林さんを上に案内して」と言った。

「ありがとうございます、結城様」夏川清美は返事をし、突然起こった周りのささやきや、鈴木の母娘の人を食わんばかりの視線を無視して、急いで乳母の後を追った。下には困惑した来客たちが残された。

結城お爺さんは何か考え深げに髭をなでながら、結城陽祐に客の接待を命じた。

二階に上がった夏川清美は、乳母と一緒に赤ちゃんの部屋に入り、脇にある赤ちゃん用の消毒液で手を洗ってから、心配そうに尋ねた。「お腹が空いているのでしょうか？」

藤堂さんは手を赤ちゃんの口元に当てて試してみてから頷き、困った表情を浮かべた。「お腹が空いているようです」

「では、お乳をあげてください」

乳母はさらに困った様子で、「坊ちゃまはタンパク質アレルギーで、粉ミルクが飲めないんです。さっき少し授乳したばかりで、今は母乳が出ないんです」

「では、何か食べて母乳の出を促してください。私が少しの間見ていますから」夏川清美自身には母乳があるのだ。

「でも...」今日は来客があり、上階の使用人は皆下に手伝いに行っていて、乳母は不安そうだった。

「結城様が私を上がらせてくれたということは、私を信用しているということです。赤ちゃんがずっと泣いているのもよくありません」夏川清美は思い切って結城陽祐の名前を出した。

効果はあった。乳母は少し迷った後、赤ちゃんを夏川清美に渡した。

不思議なことに、小さな命は夏川清美の腕の中に抱かれた瞬間に泣き止み、よく似た桃のような小さな瞳で好奇心いっぱいに目の前の人を見つめた。

夏川清美の心は突然酸っぱく柔らかくなった。これは彼女が産んだ赤ちゃんなのだ。