第20章 警察を呼びましょうか?

青筋の浮き出た荒い手が鉄の棒を持ち上げ、夏川清美の後頭部めがけて振り下ろした。全力で振り下ろされたその一撃は、命までは取らないまでも、半身不随にするには十分な力だった。

地面に倒れていた林夏美はそれを見て、驚いていた表情が和らぎ、夏川清美に向かって不気味な笑みを浮かべた。

夏川清美は眉をひそめた。

ドン!

鈍い音と共に棒が振り下ろされ、激痛が走った。

言葉では表現できないほどの痛みに、林夏美は既に骨折していた足を抱えながら、止めどなく涙を流した。彼女は信じられない様子で目を見開き、山口一幸を指差して叫んだ。「このバカ野郎!」

ガラン!

林夏美の罵声と共に、鉄の棒が地面に転がり落ちる音が響いた。一幸は慌てふためいて林夏美の前に這いつくばり、「お嬢様、大丈夫ですか?」

夏川清美は手元に転がってきた鉄の棒を見て、それを拾い上げ、体を支えながら何とか立ち上がった。先ほど林夏美が笑った直後、彼女は素早く身を屈め、庭師の一撃をかわしていたのだ。

しかし山口一幸は力を入れすぎて止められず、鉄の棒は目の前にいた林夏美の足に当たってしまった。

林夏美の左足は元々治っていなかったため、再び傷つき、その痛みは想像に難くなかった。

夏川清美は痛みに暴れる林夏美を見ながら、親切心から尋ねた。「末子叔母さん、夏美さん、山口叔父さんに何か悪いことをしたんですか?こんなに手荒く扱われるなんて。警察に通報した方がいいんじゃないですか?」

「そんなことするな!」鈴木末子は聞いた途端に神経を尖らせ、すぐに夏川清美を脅した。

林夏美は足が完治していなかったところに、山口一幸にひどく打たれ、激しい痛みに苦しみながら憎々しげに言った。「お母さん、こんな役立たずを生かしておいて何になるの?」

夏川清美を始末できなかっただけでなく、母娘までも傷つけられてしまった。

「申し訳ありません、お嬢様。本当に故意ではなかったんです!」一幸は黒く痩せた顔から先ほどの険しさを消し、申し訳なさそうに説明した。目には切迫した色が浮かんでいた。

「行って、あいつを殺してきなさい。そうしたら許してあげる!」林夏美は痛みで冷や汗を流しながらも、夏川清美への制裁を忘れなかった。