夏川清美は初めて結城家の本邸に泊まることになった。
乳母と藤堂さんはここ数日疲れ果てていたので、夏川清美は二人を隣の部屋に休ませ、一人で夜を過ごすことにした。
四月の気候は心地よく、赤ちゃんの部屋は窓を閉めていても息苦しくなることはなく、林邸の物置で過ごすよりもずっと快適だった。
小さな赤ちゃんは今のところ、食べては眠るの繰り返しで、食事とおむつ替えの二つの欲求を満たせば大人しくしていた。
夏川清美は横になり、生まれてまだ10日の赤ちゃんをじっくりと観察する時間が finally できた。
「こんにちは、ママよ!」
小さな赤ちゃんは深い眠りについていて、まったく反応しなかった。
夏川清美は思わず笑みがこぼれたが、すぐに重い気持ちになった。結城陽祐との契約は1年。1年後、どうやって木村久美のそばにいられるのだろう?