第44章 二少、私が天才だと信じますか?

夏川清美は三秒間呆然としたあと、自分が間違いを犯したことに気づいた。

今の彼女は林夏美、一年生で休学した医学生なのに、どうして一目で結城陽祐の体調を判断できたのだろう。

そうだ、彼の詳しい病状を知るには、結城陽祐のカルテを確認する必要がある。

結城陽祐のカルテと言えば、清美には印象があった。

過労死する前、次の手術の患者が結城陽祐だったような気がする。

あの時、先輩が京都で名を馳せたこの二少爺のことを特に強調していたが、彼女は全く気にせず、ただの普通の患者として扱っていた。

誰が想像できただろう、死んでこの男性とより深い関わりを持つことになるとは。

これは人と人との縁が運命づけられているということなのだろうか?

例えば彼女と結城陽祐は、患者と医者の関係に運命づけられているのかもしれない。

前世では手術が成功しなかった、今世ではこの男が借りを取り立てに来たのか?

結城陽祐は目の前のぽっちゃり女子が自分のことを考えて上の空になっているのを見て、苦笑いしながら「考えがまとまった?」と尋ねた。

「何を考えるんですか?」清美は困惑した様子で聞き返した。

「嘘をどう取り繕うかってことだよ」結城陽祐は揶揄するような口調で言った。このぽっちゃりくんは自分に興味がないと言いながら、彼のカルテまで調べられるなんて、相当な手間をかけたに違いない。

「えっと、陽祐さん、私が天才だと信じてくれますか?」清美は突然この言葉を聞いて、思わず自分の唾で咳き込み、桃のような瞳で真摯に結城陽祐を見つめながら尋ねた。

「あなたは信じる?」

「信じます」清美は極めて率直に答えた。前世では彼女は医学界で認められた天才だった。今世では人体に対する感覚がより鋭敏になっていることを感じており、相手の特定の器官を注意深く観察すると、脳内に自然とデータが浮かび上がってくる。

そのデータは患者の病状を正確に分析するのに十分なものだった。

「ふふ」結城陽祐は軽く笑いながら立ち上がり、ベッドに横たわる赤ちゃんを見た。「木村久美のことをよく面倒見てやってくれ。僕は君には興味がない」

清美「……」

前回言ったことはまだ足りなかったのだろうか?

まあいい、患者と気にする必要もない。

しかし、出て行こうとした結城陽祐は突然足を止め、眉をひそめて清美を見つめた。