病院。
林富岡は鈴木末子を見つめながら、「雲さんの件は私が処理する。あなたと夏美は足をゆっくり治しなさい」と言った。
「でも、あなた。被害者の家族が言ってたわ。来月初めまでに賠償金が支払われなければ、富康製薬を告発すると。そうなったら私たち...」鈴木末子はそこまで言って、言いよどむような困った表情を浮かべた。
すでに40代半ばだというのに、手入れが行き届いているせいで、全身から漂う艶めかしさは若い女の子のそれとは違い、より一層の色気を感じさせた。
以前なら、鈴木末子のこんな仕草に林富岡はすぐに心を痛め、なだめて譲歩したことだろう。
しかし今日は、結城家で夏川清美にやられ、結城家の冷遇を痛感し、その後雲さんを殴ったものの、亡き妻のことを思い出してしまい、鈴木末子の言葉に反応しなかった。