第115章 研究室の金庫

健二は身を縮めて、もう一度尋ねようとしたが、夏川清美の青白い顔色を見て、口を閉じた。

夏川清美はこめかみを押さえ、耳鳴りが消えてから顔を上げた。「結城陽祐がここで事件に巻き込まれたなら、お屋敷の方も何か起きているかもしれない?」

結城陽祐の容態が安定してから、夏川清美が最も心配していたのは木村久美と結城お爺さんのことだった。

「結城お爺さんは病院にいらっしゃいます」夏川清美の言葉に、健二のこめかみがズキズキと痛んだ。

彼は陽祐さんの事件以来、ただ陽祐さんを救うことばかり考えていて、お屋敷のことなど全く頭になかった。

もし坊ちゃんに何かあったら……

健二はそれ以上考えることができなかった。

「病院は人が多くて目も多い。何か起きても収拾がつきにくいから、お爺さんは大丈夫なはず」夏川清美は分析を終えると、歯を食いしばった。「お屋敷の人々は皆信頼できる?」

「今日、坊ちゃんの側にいる者たちは皆腹心の部下です」健二はそう答えるしかなかった。

しかし、今日のような極秘の手術の予定は、場所さえ誠愛病院の地下研究室という人知れぬ場所を選んだのに、それでも見つかってしまった。

そうなると、お屋敷での坊ちゃんの安全については、健二も保証できなかった。

「行きましょう」夏川清美はじっとしていられなくなった。今日、木村久美と離れて既に六時間が経過している。小さな子がどんなに騒いでいるか分からない。もしお屋敷が陥落していたら、その結果は想像したくもなかった。

そして今は誰も信用できない。

「どこから行きます?」健二は夏川清美を見ながら尋ねた。彼は研究室に詳しくなかったが、質問してから気づいた。自分が詳しくないのなら、清美さんが詳しいはずもない。

夏川清美は黙り込んだ。加藤迅のオフィスへの通路が一番便利で、出る時の認証も面倒ではない。しかし、出た途端に結城陽祐を殺そうとした者たちがそこで待ち構えていないとは限らない。

もう一つの出口は直接病院の外に出られるが、結城陽祐の今の状態では到底退院できない。

特にその通路は非常に長く、普通の人なら気づかれずに出られるが、彼らは二台のストレッチャーを押して移動する。姿を見せた瞬間、周囲の注目を集めることは間違いない。

そうなれば、結城陽祐を襲った者たちがまた行動を起こすかもしれない。