第157章 清美、何があったの?

ピンポーン。

結城陽祐が口を開く前に、エレベーターは7階に到着した。

結城陽祐は後ろの夏川清美を無視して、一人でエレベーターを出た。

夏川清美は、もしこの男が林夏美に近づくなと言ってきたらどうしようと考えていたところ、藤堂さんがスイートルームから慌てて出てくるのが見えた。

「佐藤清美、どうしてこんなに遅いの?私の母乳が足りなくて、彼は...陽祐様、どうしてここに?」藤堂さんは焦っていて、車椅子に座っている結城陽祐に気づかず、夏川清美を見るなり立て続けに話し始めたが、途中で急に空気が変わったことに気づき、横を向くと車椅子の結城陽祐が目に入り、声のトーンが急に変わって硬くなった。

「私が来てはいけないのか?」結城陽祐は藤堂さんを一瞥した。どうやら夏川清美が子供を産んだことを藤堂さんは知っているようだ。

藤堂さんは二少からこんな口調で話しかけられたのは初めてで、それも鈴木濱に脅されたあとのことだった。その場で足がくだけ、あやうく膝をつくところだった。急いで木村久美をしっかりと抱きしめ、声を震わせながら「に...二少様...」と言った。今回は何も間違ったことはしていないのに!

「赤ちゃんに授乳してきなさい」結城陽祐は動揺している藤堂さんを無視し、代わりに夏川清美に無遠慮に命じた。その口調は、まるで横暴な夫のようだった。

夏川清美は一瞬固まり、奇妙な表情で結城陽祐を見た。もし木村久美の可哀想な表情に出会わなければ、仕事を放棄したいとさえ思っただろう。

しかし、小さな子の悲しそうな顔には抗えず、藤堂さんの腕から赤ちゃんを受け取り、スイートルームに入った。

藤堂さんは車椅子に座る、病院着を着ていても謫仙のような冷たい表情の二少を見て、そして明らかに男性のスーツを羽織った夏川清美を見て、最後は歯を食いしばってから部屋に入った。

夏川清美はすでに準備を整え、木村久美に授乳していた。

小さな子は空腹で、とても力強く飲んでいて、その音が部屋の中で特に目立っていた。

幸い結城陽祐は紳士的で、中には入ってこなかった。

藤堂さんはほっと息をつき、夏川清美の顔の傷跡と、汚れて破れたウェディングドレスに気づいた。「清美、何があったの?」

「長い話なの。まず木村久美に授乳させて」夏川清美は藤堂さんに今日の一連の複雑な出来事を説明することができず、曖昧に答えた。