ピンポーン。
結城陽祐が口を開く前に、エレベーターは7階に到着した。
結城陽祐は後ろの夏川清美を無視して、一人でエレベーターを出た。
夏川清美は、もしこの男が林夏美に近づくなと言ってきたらどうしようと考えていたところ、藤堂さんがスイートルームから慌てて出てくるのが見えた。
「佐藤清美、どうしてこんなに遅いの?私の母乳が足りなくて、彼は...陽祐様、どうしてここに?」藤堂さんは焦っていて、車椅子に座っている結城陽祐に気づかず、夏川清美を見るなり立て続けに話し始めたが、途中で急に空気が変わったことに気づき、横を向くと車椅子の結城陽祐が目に入り、声のトーンが急に変わって硬くなった。
「私が来てはいけないのか?」結城陽祐は藤堂さんを一瞥した。どうやら夏川清美が子供を産んだことを藤堂さんは知っているようだ。