病院に着くと、「救急処置」の後、結城陽祐は病室に戻された。
夏川清美は散らかし放題の部屋を見て、恥ずかしそうに鼻を触り、「あの...元通りにしましょうか?」
「いいよ、これは命の恩を代価に得たものだから」結城陽祐はベッドに寄りかかり、破れた布団を見ながら、不快感を堪えて、半分破れたズボンの裾を揺らして、「これでいい」
夏川清美は意味深な目で男を見つめ、「本当に?」
「本当だよ」結城陽祐は夏川清美をからかうため、そして自分の言葉を守るため、強がって言い切ったが、すぐに後悔の念が湧いてきた。
案の定、夏川清美がウェディングドレスを引っ張り、真ん中のピンクダイヤモンドを力いっぱい、さらに力を入れてこじ取った。
それだけでなく、ピンクダイヤモンドを取った夏川清美は、ドレスと同じ色の腰のリボンを横に引っ張り、さらに引っ張って、対称だったリボンを大小不揃いにしてしまった。
結城陽祐、「……」
深呼吸!
今なら返品できるだろうか?
結城陽祐が怒り出す前に、外から急いだノックの音が聞こえた。
結城陽祐は歯ぎしりをして、「入れ」
藤堂さんは木村久美を抱きながら、慌てて部屋に入ってきた。「陽祐さま、久美がお腹を空かせて...久美が佐藤清美を探しています」
ずっと子供の面倒を見ていた藤堂さんは、婚約式場で起きたことも、陽祐さまが夏川清美が産婦だと知っていたことも知らず、話の途中で慌てて言い直した。
「うん、彼女に任せて、先に出てて」結城陽祐が言った。
藤堂さんは戸惑って、「これは...でも...」
「出て行きなさい」結城陽祐は藤堂さんに言い訳の余地を与えなかった。
藤堂さんは困惑して立ち尽くし、夏川清美を心配そうに見つめた。
夏川清美は前に出て木村久美を受け取り、頬で小さな子の鼻先を優しく触れ、藤堂さんに安心するよう合図して、「外で待っていて」
藤堂さんは心に疑問を抱きながらも、おとなしく病室を出た。
夏川清美の腕の中の木村久美は全然おとなしくなかった。藤堂さんのところで満足に食べられなかった彼は、今ママの匂いを嗅ぎ、しばらくすり寄った後、夏川清美が授乳する前に、小さな頭を夏川清美の胸に突っ込んだ。